2018-01-01から1年間の記事一覧

クラシック音楽とは何か

岡田暁生『クラシック音楽とは何か』小学館、2017 「クラシックプレミアム」誌の連載をまとめたもので、エッセイのような形態をとっているが、ある程度この分野を知っている人が読んでさらに知識を深めるための本。 全体として、「クラシック音楽」の歴史を…

ロシア絵画の至宝

「ロシア絵画の至宝」東京富士美術館 八王子の東京富士美術館でやっていた展覧会。国立ロシア美術館からの借り物展覧会。創価学会つながりで、いろいろ借りて来られるのだろう。 19世紀ロシア美術は、だいたい貴族っぽい、ちょっと金持ちから大金持ちの趣味…

制服ぬすまれた

衿沢世衣子『制服ぬすまれた』小学館、2018 衿沢世衣子の新刊。この人の本は、あまり気にせずに即買いすることにした。これはミステリ仕立て。 殺人すれすれの話から、表題作の制服泥棒の話など、この長さでサクッとまとまるのかとちょっと感動した。とにか…

コンビニエンスストア様

村田沙耶香『コンビニエンスストア様』文藝春秋、2016 これは電子書籍で、『ラヴレターズ』所収の掌編だけ切り出したもの。「コンビニへのラブレター」という形式で、『コンビニ人間』が出たので、それに追加のような形で書かれたのだろう。 著者にとって、…

コンビニ人間

村田沙耶香『コンビニ人間』文春文庫、2018 バカ売れしているという『コンビニ人間』、あっと言う間に読めた。やはり傑作。 村田沙耶香自身、本当に最近までコンビニバイト一直線で暮らしてきた人。究極的に機械的な場所。作者はそれが好きな人。 主人公とな…

転生!太宰治

佐藤友哉『転生!太宰治 転生して、すみません』星海社、2018 どこかに書評が出ていて、ちょっとおもしろそうだったので読んでみた。これはけっこうおもしろい。 いきなり太宰治が現代に転生、自分のことを拾ってくれた女といきなり心中(両方、生き残る)と…

授乳

村田沙耶香『授乳』講談社文庫、2010 これはちょっと前の村田沙耶香の作品。「授乳」「コイビト」「御伽の部屋」の3作入り。 いまと変わらぬ作風で、完全に頭がおかしい。一番好きなのは、「御伽の部屋」。著者は、性欲があっても異性がいらない世界を書き綴…

平家物語

角川書店編『平家物語 ビギナーズ・クラシックス日本の古典』角川書店、2011 角川のビギナーズ・クラッシクス版「平家物語」。章段ごとに、簡単な現代語訳の要約があり、編者が強調したいところだけ、抜粋の現代語訳と原文がつけられている。これは非常に読…

文豪たちの友情

石井千湖『文豪たちの友情』立東舎、2018 日本近代文学の文豪同士の人間関係物語。友情といっても、半ば倒錯的な、ややこしい関係ばかり。13組の組み合わせを話にとっていて、佐藤春夫と堀口大学、萩原朔太郎と室生犀星、武者小路実篤と志賀直哉、川端康成と…

漢字と日本語

漢字と日本語高島俊男『漢字と日本語』講談社現代新書、2016 一昨年出ていた本だが、あいかわらず勉強になるところだらけ。 白川静はまた別のレベルになると思うが、現用されている言葉の語源でも、これだけ追求されていると、こんなに勉強になる。「兵站」…

文豪失格

千船翔子『文豪失格』実業之日本社、2015 文豪たちの関係性で遊ぼうというマンガ。主な登場人物では、夏目漱石、泉鏡花、芥川龍之介、谷崎潤一郎、太宰治、中原中也、川端康成などなど。 編集プロダクションとの共著になっているので、構成やエピソードの選…

霊性.霊界ガイド

『別冊正論28 霊性・霊界ガイド 物質世界の向こう側 ーあの世を信じて生きる』2016 これは正論が相当ヤバい方向に手を伸ばしているというので、軽く読んでみた。まあ、確かにヤバくないことはない。 バラバラにいろんな人の原稿が載っていて、最初は壇蜜。ま…

医者の本音

中山祐次郎『医者の本音 患者の前で何を考えているか』sbクリエイティブ、2018 著者は、消化器外科医。鹿児島大学卒、1980年生まれ。 この本、医者の職業紹介みたいなものだが、ぜんぜん知らない人でもわかるように、親切に書いてある。しかし、いちばん驚い…

水色の部屋

ゴトウユキコ『水色の部屋』太田出版、2014-15 いま、『夫のちんぽが入らない』のマンガ版を連載しているゴトウユキコのマンガ。かなりエグい作品。 母子家庭の高校生男子と半分終わっているような女子、男子の母、男子と女子の同級生あたりが登場人物。これ…

宿命 習近平闘争秘史

峯村健司『宿命 習近平闘争秘史』文春文庫、2018 これは以前単行本で出ていた、『十三億分の一の男』の文庫化。しかし、前著が2015年までの情勢をもとに書かれてから、3年分の情報を追加して書き直されているので、新しい本として成立している。 内容は新聞…

ねほりんぱほりん マッチングアプリにハマる人

「ねほりんぱほりん」、「マッチングアプリにハマる人」 マッチングアプリにハマっている人の回。男女一人ずつ出てきた。男は、智史20代後半、東京在住、代理店勤務。女は、くるみ20代なかば、地方在住、看護師。 見た目はそれなりにいいらしい。智史は200人…

ねほりんぱほりん サークルクラッシャーと呼ばれた女

「ねほりんぱほりん」、「サークルクラッシャーと呼ばれた女が登場。7人の男と次々に」 これは再放送だが、初回を見ていないので同じこと。 登場するのは「サヤカ(20代後半)」、男性経験20人。まあ、それだけなら普通だが。 有名私立大学のスポーツ系サー…

自衛隊の闇組織

石井暁『自衛隊の闇組織 秘密情報部隊「別班」の正体』講談社現代新書、2018 著者は共同通信編集委員。この本は、「陸幕運用支援・情報部別班」のレポート。 「別班」は、陸上自衛隊のヒューミント組織。人数ははっきりしていないが、数十人規模か。メンバー…

聖書、コーラン、仏典

中村圭史『聖書、コーラン、仏典 - 原典から宗教の本質をさぐる 』中公新書、2017 これは良書。新旧両約聖書、コーラン、仏典と、ヒンドゥー、儒教、古事記(こっちは簡単)をまとめてある本。 もちろん、ただの要約ではつまらないが、聖典のあり方を横に考…

自分の顔が好きですか?

山口真美『自分の顔が好きですか? 「顔」の心理学』岩波ジュニア新書、2018 著者は心理学者。顔と心理の関係を研究している。表情の読み取りが何歳くらいからできるのか、そもそもなぜ表情の読み取りができるのか、顔のどこを見ているのか、などなど、いろ…

ミシマの警告

適菜収『ミシマの警告 保守を偽装するB層の害毒』講談社+α新書、2015 三島由紀夫をネタにして、保守主義を後押しする本。思っていたよりおもしろかった。 三島由紀夫が保守だったという理由は、三島が反近代だから。保守とは反近代のこと。だから三島は幻想…

詩経・楚辞

牧角悦子訳『詩経・楚辞』角川ビギナーズ・クラシックス、2014 詩経と楚辞の抄訳だが、これはかなり驚いた。というか、古代詩の翻訳は、自分が昔読んだものとはもはやぜんぜん違ったものになっている。 詩経は無難な訳しか読んでいなかったが、これを読むと…

言ってはいけない中国の真実

橘玲『言ってはいけない中国の真実 橘玲の中国私論』ダイアモンド社、2018 これは非常な好著。中国専門家ではない著者が、中国社会のおよその構造について、だいたい適切なことが言えている。 結局中国社会は人口が多すぎ、多様性がありすぎる。これを一つに…

妻のトリセツ

黒川伊保子『妻のトリセツ』講談社+α新書、2018 黒川伊保子の新著。しかし著者ではなく、援助者となっており、あとがきを読むとライターの書いた原稿に手を入れて監修した程度とも言える。実質的にはこの人は科学者と言うよりは、エッセイストみたいなもの。…

戸籍アパルトヘイト国家・中国の崩壊

川島博之『戸籍アパルトヘイト国家・中国の崩壊』講談社+α新書、2017 これも快著。中国社会分析として、おもしろい視点を提供している。一番の鍵は、農村戸籍と都市戸籍。農村戸籍保持者が9億人。都市戸籍保持者が4億人余りいるが、都市戸籍保持者のうち、富…

習近平のデジタル文化大革命

川島博之『習近平のデジタル文化大革命』講談社+α新書、2018 これは好著。現在の中国の政治路線を説明するだけでなく、中国の歴史的な構造や文化的な構造も併せて分析できており、全体を見通した中国社会論になっている。 中国は今がバブルの終末期。人口減…

「統一朝鮮」は日本の災難

古田博司『「統一朝鮮」は日本の災難』飛鳥新社、2018 古田博司はだいたいどの本も同じような感じだが、これもそうで、基本は韓国と北朝鮮は同じであり、朝鮮王朝やその前からずっと受け継がれてきた歴史のパターンを反復しているから、いつまでたっても同じ…

半分、青い 第26週

「半分、青い」第26週、「幸せになりたい!」 この週でおわり。しかし、これは失敗作。 結局、そよ風ファンが完成しただけ。鈴愛と律の関係は中途半端。それに本筋に関係あるのかどうかわからない、いろいろな要素を入れすぎ。 地震は、このタイミングで入れ…

半分、青い 第25週

「半分、青い」第25週、「君といたい!」 鈴愛と律の扇風機開発の話と、それに鈴愛の別れた旦那、涼次がからむ話。しかし、最終週の前で、この展開は失敗。 律の扇風機開発の話は、これ自体があまりおもしろくないだけでなく、ストーリーにはめ込むこと自体…

日本衆愚社会

呉智英『日本衆愚社会』小学館新書、2018 呉先生の新刊。あいかわらずの快調なペース。 呉智英はたしか1948年生まれだったので、70歳。書き物をするのに年をとりすぎというほどのことはない。書いていることはあいかわらずで、読んでいて気持ちいい。土人、…