2006-09-01から1ヶ月間の記事一覧

北朝鮮報道

川上和久『北朝鮮報道』、光文社新書、2004 駄本。著者自身がいっているように、著者は北朝鮮問題の専門家ではなく、メディアの専門家である。ところが、本の内容は北朝鮮と日本の関係についての事実やそれに関する報道の内容を単に羅列しただけであって、そ…

志士と官僚

佐々木克『志士と官僚』、講談社学術文庫、2000 幕末から明治にかけての「志士」を明治「官僚」と対比させることによって、維新の方向性がどう変わっていったのかを考えようとする本。1984年にミネルヴァ書房から出たものの再刊。本論の志士を論じる部分より…

明治国家の建設

坂本多加雄『明治国家の建設 日本の近代2』、中央公論社、1998 先年亡くなった著者の執筆意図は最初の部分で明らかにされている。「近代化論」「マルクス主義理論」などの大きな物語に即して語られてきた明治維新史を、当事者たちそれぞれの持っていた物語…

LOFT ロフト

「LOFT ロフト」、中谷美紀、豊川悦司主演、黒沢清監督、LOFT製作委員会、2006 新進作家(中谷)の筆が進まず、環境を変えようとして都会のマンションから、田舎の一戸建てに引っ越す。ところが、その向かいには怪しい建物があって怪しい男(豊川)が出入り…

風味絶佳

山田詠美『風味絶佳』、文藝春秋、2005 山田詠美の短編集。はじめのほうの「間食」はいまいち、「夕餉」はまあいいか。表題作の「風味絶佳」はそれなりにいい。後のほうにのっている「アトリエ」「春眠」のほうがもっといいけど。しかし全体として山田詠美は…

真夜中の弥次さん喜多さん

「真夜中の弥次さん喜多さん」、 長瀬智也、中村七之助主演、宮藤官九郎監督、アスミック・エースほか、2005 ただものではない。常人の理解を超えている。おもしろいのかおもしろくないのかすらわからない。今夜の夢に出てくるかもしれない。ただただ強烈な…

魁!!クロマティ高校THE★MOVIE

「魁!!クロマティ高校THE★MOVIE」、須賀貴匡主演、山口雄大監督、「魁!! クロマティ高校THE★MOVIE」製作委員会、2005 単純に言うとすべっている。コミックとアニメ版はおもしろかったんだけどねぇ。実写向きの素材じゃないのか、脚本が悪いのか。「宇宙猿人…

スモールトーク

絲山秋子『スモールトーク』、ニ玄社、2005 出版社でわかるように、車をネタにした連作小説。しかし、著者の小説にしてはいまいちおもしろくない。なぜだろう。車の描写にいまいち入り込めないからか?それに加えて、登場人物のキャラクターがいまいち立って…

自民党を壊した男

読売新聞政治部『自民党を壊した男 小泉政権一五○○日の真実』、新潮社、2005 自公連立、民主党、04年参院選、政策決定過程の変化、自民党の変貌の5点から、政治状況全体の変化を描こうとする本。小泉内閣そのものに焦点が当たっているのは政策決定過程の変化…

海の仙人

絲山秋子『海の仙人』、新潮社、2004 絲山秋子の中編。宝くじをあてて会社を退職し、敦賀で釣りをして暮らす河野勝男が、離れて暮らす恋人の中村かりん、会社の同僚だった女、片桐、どこからともなく現れる「ファンタジー」とからむというお話。河野の力の入…

南天

東郷隆『南天』、講談社、1995 東郷隆は上手い小説家だ。見慣れない山伏の話から忠臣蔵の話、それも大野九郎兵衛のエピソードにもっていき、それが四十七士とは別に吉良を討とうとしていたという表題作は、よくできた時代劇映画を見せられているようだ。小説…

検証 日朝関係60年史

和田春樹、高崎宗司『日朝関係60年史』、明石書店、2005 「北朝鮮の手先」扱いされて叩かれることの多い和田と高崎が、共産党、社会党、自民党、「帰国運動」、訪朝記、朝日新聞の社説などについて、その対北朝鮮姿勢が60年間でどう変わったかを、ゲストスピ…

信長

坂口安吾『信長』、宝島社、2006 原著の発行年は、1953年。いまごろこんな出版社から出るのは、2005年が安吾没後50年で著作権が切れたということだろう。元は1952年から53年の新聞連載だというが、驚くのはこの小説、桶狭間で終わってしまうのである。しかも…

開国・維新

松本健一『開国・維新 日本の近代1』、中央公論社、1998 中公から出ている「日本の近代」のうち通史部分8巻の最初の巻。他の維新史概説と異なるところは、「日本において、パトリオティズムがどのように現れ、成立するに至ったか」に焦点をあてていることに…

逃亡くそたわけ

絲山秋子『逃亡くそたわけ』、中央公論新社、2005 博多の精神病院に入院している主人公、花ちゃんは、同じ病棟の名古屋出身なのに標準語しかしゃべらない「なごやん」を誘って病院を脱走、なごやんの車であてどもなく九州をさまようのでした、という話。別に…

日本の戦争責任をどう考えるか

船橋洋一(編著)『日本の戦争責任をどう考えるか』、朝日新聞社、2001 タイトルとは異なり、内容は「アジア諸地域における歴史的問題とその和解について」開かれたシンポジウムの内容をまとめたもの。確かに表題と本の内容の間に関係はあるが、こういうタイ…

プリンシプルのない日本

白洲次郎『プリンシプルのない日本』、新潮文庫、2006 最近この人の名前をよく見るので、つい手にとってしまった。著者は、戦前から経済人として吉田茂、牧野伸顕の人脈に連なり、戦時中は「日本は必ず負ける」と断言して百姓生活、戦後は吉田の引きで終戦連…

イッツ・オンリー・トーク

絲山秋子『イッツ・オンリー・トーク』、文春文庫、2006 「やわらかい生活」の原作本ということで、思わず手にとってしまいました。なるほど原作はこういう話だったわけね。映画は祥一(豊川悦司の役)を中心に描いているので、その点でよくいえばほのぼの、…

太陽

「太陽」、イッセー尾形、佐野史郎、ロバート・ドーソン主演、アレクサンドル・ソクーロフ監督、レンフィルム、2005 ずっと見たかったのだがやっと見ることができた。イッセー尾形の昭和天皇役は歴史に残ると思う。「天皇」をこれくらい体現できた役者はいな…

やわらかい生活

「やわらかい生活」、寺島しのぶ、豊川悦司主演、廣木隆一監督、「やわらかい生活」製作委員会、2006 寺島しのぶが、躁うつ病で仕事をリタイヤし、両親の生命保険金で食べているお姉さんの役。それに従兄(豊川悦司)、元同級生の都議候補(松岡俊介)、出会…

父の縁側、私の書斎

檀ふみ『父の縁側、私の書斎』、新潮文庫、2006 著者の「家」関係のエッセイ。家といっても主に建物のほう。なんと著者は生まれてからずっと同じ家に(建物は建て替えられているようだが)住んでいるのだという。生まれてから何度引っ越したかわからない自分…

国民の天皇

ケネス・ルオフ(高橋紘監修、木村剛久、福島睦男訳)『国民の天皇 戦後日本の民主主義と天皇制』、共同通信社、2003 戦後の天皇制と日本社会との関係についての本。憲法や皇室典範といった制度的な側面から、内奏のような非公式な政治的役割、戦争責任問題…

歴史和解の旅

船橋洋一『歴史和解の旅』、朝日新聞社、2004 著者の週刊朝日のコラム「世界ブリーフィング」の中から、歴史問題とその和解に関係する文章を採録した本。ほとんどは既に単行本に載せられていたもの。広い取材対象、行動力で鳴る著者だけのことはあって、ほと…

ゆれる

「ゆれる」、オダギリジョー、香川照之主演、西川美和監督、「ゆれる」製作委員会、2006 イケてる写真家の弟とさえないガススタンドのオーナーの兄が、ガススタンドで働く女の子(すでに弟とデキてる)といっしょに渓谷に出かける。ところが、女の子が渓谷の…

世界史とヨーロッパ

岡崎勝世『世界史とヨーロッパ』、講談社現代新書、2003 ヨーロッパにおいて、それぞれの時代ごとに「世界史」がどう描かれていたのかを検討することを通じて、「世界史」の成立過程を追究する本。特にヨーロッパとアジアの区別のしかた、時代区分の分け方に…

蹴りたい背中

綿矢りさ『蹴りたい背中』、河出書房新社、2003 なんでいまごろこんなものを、という感じだが、図書館の目立つコーナーにあったので思わず借りてしまった。著者は1984年生まれというから、もう大学は卒業してるか。自分が高校生のときは、主人公のハツよりは…

傭兵の二千年史

菊池良生『傭兵の二千年史』、講談社現代新書、2002 古代ギリシャから近代初期までの傭兵史を一瞥した本。しかしほとんどの記述は中世から近代にかけてのヨーロッパにおける傭兵史なので、タイトルはややミスリーディングのような気もする。 内容は十分おも…

「戦艦大和」と戦後

吉田満(保阪正康編)『「戦艦大和」と戦後』、ちくま学芸文庫、2005 「戦艦大和ノ最期」を含む、吉田満の文章を集めたもの。読んでみて驚いたのは、わたしが昔読んだ「戦艦大和ノ最期」とは内容がかなり違っていること。わたしが読んだのは初出テクストのほ…