#日本史

補給は大事!

LELF chem125『補給は大事! 海上護衛のお話その2』2018 これは薄い本。その2ということなので、前に同様の本が出ているはずだが、それは不知。ほとんどが図表。 基本的にわかるのが、主要目的港、船団数、隻数、トン数。あとは航路ごとに、投入船舶、…

江戸の思想史

田尻祐一郎『江戸の思想史 人物・方法・連環』中公新書、2012 江戸期の思想を網羅的に概観した本。主要な思想家の著作が一通り概観されているほか、教派神道などの民衆宗教にも言及されているし、もちろんナショナリズムとの関連についても触れられている。 …

1971年の悪霊

堀井憲一郎『1971年の悪霊』角川新書、2019 堀井憲一郎、1958年生まれだった。この本は、1971年の雰囲気(著者はこの年には中学生)を事件ベースで切り取ったというもの。著者が高校生、大学生の時には「残り香」みたいなものがあっただけだが、そのくらいの…

神代史の研究法

津田左右吉『神代史の研究法』 古事記や日本書紀に出てくる神代の記述をどのように理解すればいいのか、ということについての津田左右吉の小文。 まず、神代の出来事を、具体的な実物に比定することをやめろという。それは、現代の合理的な考え方をそのまま…

仏教史家に一言す

津田左右吉『仏教史家に一言す』 これは小文。しかし津田左右吉の立場はよく現れている。 基本的には、仏教史家が仏教のよい影響だけを強調しているが、それは間違っているということ。津田左右吉がいうのは、歴史というのは公平なものでなければならないと…

史論の流行

津田左右吉『史論の流行』 19世紀末の文章だが、津田左右吉が日本歴史学の浅さを嘆いている文章。 史論が流行しているが、歴史を論じるには正確な事実がなければならず、それが史論に欠けているという。史論というのは国史についてのものなのだが、津田左右…

瘠我慢の説

福沢諭吉『瘠我慢の説』 福沢諭吉が、勝海舟、榎本武揚を論難した文章。 勝海舟、榎本武揚は、幕臣でその後明治政府に仕えた人だが、彼らに対して「あなたたちはプライドないのか」と言っている。もちろん、福沢は、勝海舟、榎本武揚の功績は認めており、江…

ミッションスクールになぜ美人が多いのか

井上章一、郭南燕、川村信三『ミッションスクールになぜ美人が多いのか』朝日新書、2018 井上章一の新刊。このタイトルで即買いした。 内容はタイトルの通り。井上章一は、「自分はミッションスクールに美人が多いと思っていたし、仏教系女子校もそう思って…

平家物語

角川書店編『平家物語 ビギナーズ・クラシックス日本の古典』角川書店、2011 角川のビギナーズ・クラッシクス版「平家物語」。章段ごとに、簡単な現代語訳の要約があり、編者が強調したいところだけ、抜粋の現代語訳と原文がつけられている。これは非常に読…

戦乱と民衆

磯田道史、倉本一宏、F.クレインス、呉座勇一『戦乱と民衆』講談社現代新書、2018 この前に出た日本史と戦争の本。古代(白村江の戦い)、中世(応仁の乱)、近世(大坂の陣)、近世ー近代(禁門の変)の4つの原稿があって、そのあとにシンポジウムの記録が2…

牟田口廉也

広中一成『牟田口廉也 「愚将」はいかにして生み出されたのか』星海社新書、2018 インパール作戦の責任者、牟田口廉也の伝記。これくらい有名な人物なのに、本格的な伝記が出たのはこれがはじめて。著者は、この時期の中国史研究者で著書の多い人なので、内…

五箇条の誓文で解く日本史

片山杜秀『「五箇条の誓文」で解く日本史』NHK出版新書、2018 五箇条の誓文をベースに戦前期日本の歴史について考えるという本。まあ、五箇条の誓文、いちおう宣言文ではあるし、いろいろ活用されていたことは事実。しかし、ここに書いてあること、けっこう…

平安時代大全

山中裕『平安時代大全』KKベストセラーズ、2016 著者は、東大資料編纂所教授だった人。故人。この本は、平安時代関連の事実についての雑纂集みたいなもの。 摂関政治の成立とか、平安時代初期の藤原氏と天皇の関係とか、自分の記憶があいまいになっていたと…

日本陸軍の基礎知識

藤田昌雄『日本陸軍の基礎知識 昭和の生活編』潮書房光人新社、2018 陸軍の兵営生活についての本。副題は昭和の生活となっているが、図版は明治、大正期のものも収録されている。 軍刀、軍装などの記述から、炊事場(烹炊所)の様子、将校、下士官、兵一人あ…

フェミニズムと戦争

鈴木裕子『フェミニズムと戦争 婦人運動家の戦争協力』マルジュ社、1986 戦時中の婦人運動家がどのように戦争に協力していたかについての本。取り上げられているのは、高良とみ、羽仁説子、市川房枝、山高しげり、奥むめお。それに「中央協力会議」に参加し…

足利義満

小川剛生『足利義満』中公新書、2012 帯がおもしろそうだった(「将軍の正体見たり」とある)ので、買って読んだが、驚倒した。 義満の有名なエピソード、天皇にとって替わろうとした、日本国王号を明から受けたのは天皇を乗り越えようとしたため、太上天皇…

兵学思想入門

拳骨拓史『兵学思想入門─禁じられた知の封印を解く』ちくま新書、2017 著者は、1976年生まれ。この本は、日本「兵学」(これは江戸時代)の歴史というものなのだが、非常に肩透かし。 だいたい「兵学」といっても、体系などなく、中国の兵法を日本風に味付け…

迷宮歴史倶楽部

モリナガヨウ『迷宮歴史倶楽部 戦時下の事物画報』学研、2017 これは非常な名著。戦前期、戦時の色々な物をイラストと文章で紹介する本。 まず砲台や要塞など、戦時下の軍事建築物の遺構。九十九里浜なんかに行くと、こういうものがまだたくさん残っている。…

図解詳説 幕末・戊辰戦争

金子常規『図解詳説 幕末・戊辰戦争』中公文庫、2017 著者は、1916年生まれ、2000年没。陸士49期、後に自衛隊に入り、富士学校特科副部長などを務め、退役後は文筆生活に入った人。『兵器と戦術の世界史』は読んだが、こっちは幕末・戊辰戦争の本。 18世紀末…

日本人とキリスト教

井上章一『日本人とキリスト教』角川ソフィア文庫、2013 日本でキリスト教がどういう仕方で受け止められていたかという歴史の本。といっても、キリスト教伝来の本筋とか、明治以後の宣教師による伝道とか、本流の話はほとんど扱われておらず、中世末から明治…

安来市立歴史資料館

「安来市立歴史資料館」、2017.9.1 ちょっと島根県に足を伸ばすことがあり、この資料館に行ってみた。ここは、昔の月山富田城跡、富田城は山城なので、その麓にある。隣接して道の駅広瀬富田城という施設があるが、道の駅にしては売店も小さく、あまり商売気…

日本陸海軍 徴兵制度あれこれ

第六兵器廠『日本陸海軍 徴兵制度あれこれ』2017 これも夏コミで拾ってきた本。明治から昭和まで、徴兵制度の変遷がまとめてある。基本的に公文書による制度のまとめなので、具体的な徴兵検査や配属についてのエピソードはないが、これでも十分役に立つ。 特…

漢文の素養

加藤徹『漢文の素養 誰が日本文化をつくったのか?』光文社新書、2006 日本への漢文移入についての本。古代の話はほとんど知らなかったので、勉強になった。 卑弥呼は漢字が書けたのかといえば、それはわからないという話。結局、漢文をまともに書けるように…

増補改訂版 日本史に出てくる官職と位階のことがわかる本

『歴史読本』編集部(編)『増補改訂版 日本史に出てくる官職と位階のことがわかる本』、KADOKAWA、2014 『歴史読本』が元なので、新人物往来社が版元で2009年に出た本の増補改訂版。中経出版から出た本を、KADOKAWAが電子版で出した。いろんな意味で非常に…

東国武将たちの戦国史

西股総生『東国武将たちの戦国史 「軍事」的視点から読み解く人物と作戦』河出書房新社、2016 軍事史の視点から戦国史を書き換えている著者の、「東国での戦国史」。取り上げられているのは、長尾景春、太田道灌、伊勢宗瑞、北条氏綱、武田信虎、長尾為景、…

もういちど読む山川日本史

五味文彦、鳥海靖編『もういちど読む山川日本史』山川出版社、2009 前に読んだ、『もういちど読む山川世界史』の日本史版。山川の日本の歴史(改訂版)教科書の簡略版。 タイトル通り、「もういちど読む」人のためのもので、日本史をやっていない人がいきな…

陰謀史観

秦郁彦『陰謀史観』新潮新書、2012 歴史、特に日米関係についての陰謀論の本。著者は陰謀論と実際に戦っている人なので、内容は確実。 戦前の陰謀論から、現在のものまで幅広く扱っている。戦前の陰謀論(日米必戦論など)についてはほとんどわかっていなか…

太平洋戦争のif

秦郁彦編『太平洋戦争のif 絶対不敗は可能だったか?』中公文庫、2010 これは文庫が2010年となっているが、もとは2001年ごろに(時期不明)グラフ社から単行本として出ており、その元になった雑誌連載は1985年に掲載された。1985年くらいなら、この程度の妄…

性のタブーのない日本

橋本治『性のタブーのない日本』集英社新書、2015 世評の高かった本だが、いまごろ読んだ。非常におもしろい。 平安時代を中心に、上古から近世までをカバーする、「文学と社会における性」についての本。 平安時代の文学での性表現がいちばんおもしろい。普…

日本軍はなぜ満洲大油田を発見できなかったのか

岩瀬昇『日本軍はなぜ満洲大油田を発見できなかったのか』文春新書、2016 タイトルはこのとおりだが、実際の内容は、戦前期日本のエネルギー開発を概観した本。内容に沿ったタイトルの方が、もっと読まれると思うが。 戦前日本では、燃料のことを考えていた…