#歴史

本居宣長

田中康二『本居宣長』中公新書、2014 これは宣長研究者による本居宣長の伝記。宣長の生涯を、著作とともに追いかけている。 宣長の思想を一言で取り出すというようなことは不遜なことだと言っていて、宣長の著作をひとつひとつ検討して、その主張や方法を説…

漢字と日本語

漢字と日本語高島俊男『漢字と日本語』講談社現代新書、2016 一昨年出ていた本だが、あいかわらず勉強になるところだらけ。 白川静はまた別のレベルになると思うが、現用されている言葉の語源でも、これだけ追求されていると、こんなに勉強になる。「兵站」…

聖書、コーラン、仏典

中村圭史『聖書、コーラン、仏典 - 原典から宗教の本質をさぐる 』中公新書、2017 これは良書。新旧両約聖書、コーラン、仏典と、ヒンドゥー、儒教、古事記(こっちは簡単)をまとめてある本。 もちろん、ただの要約ではつまらないが、聖典のあり方を横に考…

関羽

渡邉義浩『関羽 神になった「三国志」の英雄』、筑摩書房、2011 関羽を「三国志」「演義」から始めて、現在の関帝信仰まで書いた「関羽の歴史」本。「三国志」と「演義」での関羽の描写の違いは、自分の中で、わかっているようでわかっていなかったことが多…

大軍都・東京を歩く

黒田涼『大軍都・東京を歩く』、朝日新書、2014 これはかなり手間をかけて作られた本。東京にある、軍関係の遺跡を訪ねて回るという企画。 この本を手にした人が、実際に歩いて回ることを前提としているので、地域ごと(23区内)に分けられ、歩くためのコー…

在日朝鮮人

水野直樹、文京洙『在日朝鮮人 歴史と現在』、岩波新書、2015 韓国併合以前から、現在までの在日朝鮮人の歴史をまとめた本。朝鮮人労働者が日本に初めて渡ったのは、1897年からである。1920年代までが第1章、敗戦までが第2章、1960年代までが第3章、1980年代…

天下統一

藤田達生『天下統一』、中公新書、2014 織豊政権の「天下統一」の内実を再検討する本。いろいろと野心的な説を提出していておもしろい。 まず、信長と将軍義昭の関係について。著者は義昭が京都を退転した後の「鞆幕府」は、実体的に存在し、特に西国諸大名…

戦時用語の基礎知識

北村恒信『戦時用語の基礎知識』、光人社NF文庫、2002 著者は大正14年生まれ、呉海軍工廠に勤め、戦後は消防で勤めていた在野の史家。この本は、戦時に使われていた言葉を100選び、解説をつけたもの。選ばれている言葉は、高等官、在郷軍人会、兵役、幹候、…

大井篤海軍大尉留学記-保科さんと私

大井篤『大井篤海軍大尉留学記-保科さんと私』、KADOKAWA、2014 『海上護衛戦』の著者、元海軍大佐大井篤が、大尉時代にアメリカ留学した際の回想。未完であり、唐突に終わっている。 初出は、「偕行」の連載で、「保科さんと私」は連載時のタイトル。保科…

西南戦争

小川原正道『西南戦争 -西郷隆盛と日本最後の内戦』中公新書、2007 西南戦争の入門書。司馬遼太郎の小説だけ読んですませるわけにはいかないので、こちらも読んでみた。 明治6年政変から、西郷から朝敵の烙印が消された明治22年までを描いた本だが、その後…

広島町新開絵図を読む

「広島町新開絵図を読む」、広島市郷土資料館、2014.1.28 この施設に行った主な目的はこっちの展示を見ること。これは、江戸時代中期(享保年間)の広島町新開絵図、つまり、広島城よりだいぶ南よりにある、「新開」つまり干拓地の様子を紹介する絵図面の展…

ごんぎつねが語る昔の暮らし

「『ごんぎつね』が語る昔のくらし」、広島市郷土資料館、2014.11.28 この施設には初めて行った。目立たないところにあるきれいな施設。原爆以前の広島の歴史を見せるための資料館。建物は、宇品にある、旧陸軍糧秣支廠缶詰工場。明治44年(1911)に建てられ…

朝鮮総連 その虚像と実像

朴斗鎮『朝鮮総連 その虚像と実像』、中公新書ラクレ、2008 金賛汀『朝鮮総連』と同じタイトル(副題がついているところは違うが)だが、同じテーマを扱いながら、独立した意義を持っている本。 違いは、金賛汀が、「編年体」で、総連の歴史を時系列的に叙述…

朝鮮総連

金賛汀『朝鮮総連』、新潮新書、2004 著者は、元総連職員で、朝鮮史研究者。1992年の著書『パルチザン挽歌-金日成神話の崩壊』、御茶の水書房、で、金日成のパルチザン活動の実態を暴露したことで、総連から裏切り者扱いされて今に至っているという経歴の人…

自衛隊「影の部隊」情報戦

松本重夫『自衛隊「影の部隊」情報戦秘録』、アスペクト、2008 著者は、陸士53期。陸軍少佐で終戦を迎え、その後産経新聞記者を経て、警察予備隊に入隊。その後保安隊に改組された後、保安隊の調査隊設立に参加。その後1964年に自衛隊を退職(階級の表記なし…

海軍将校たちの太平洋戦争

手島泰伸『海軍将校たちの太平洋戦争』、吉川弘文館、2014 吉川弘文館の歴史文化ライブラリーで、最近出た本。海軍から見た太平洋戦争について書かれている。 この本の眼目は、「海軍から見た太平洋戦争終結までのプロセスの内在的合理性」。外から見て、合…

日米秘密情報機関

平城弘通『日米秘密情報機関 「影の軍隊」ムサシ機関長の告白』、講談社、2010 塚本勝一『自衛隊の情報戦』は羊頭狗肉だったが、こちらは読む価値のある本。著者は、1920年生まれ。保安隊本部情報調査部(ソ連担当)、自衛隊中央資料隊第1科長などを経て、陸…

自衛隊の情報戦

塚本勝一『自衛隊の情報戦 陸幕第二部長の回想』、草思社、2008 読んで驚いたのは、この本の内容は、全然「自衛隊の情報戦」について書いていないこと。著者は実際に、陸幕第二部長であり、韓国の最初の防衛駐在官も経験しているのだが、「自分は情報屋だと…

昭和陸軍全史1 満州事変

川田稔『昭和陸軍全史1 満州事変』、講談社現代新書、2014 これは非常におもしろい本。3巻で満州事変から太平洋戦争までの日本陸軍の歴史を描こうというシリーズの第1巻。満州事変の時期を扱う。 宇垣一成派:元の田中義一派=長州閥と、それに対抗する中堅…

戦いの世界史

ジョン・キーガン、リチャード・ホームズ、ジョン・ガウ(大木毅監訳)『戦いの世界史 一万年の軍人たち』、原書房、2014 BBCのTVシリーズ「戦いの世界史」の制作にあたって出版された本。原著は1985年刊行なので、古い本ではあるが、今読んでもあまり古さを…

1949年の大東亜共栄圏

有馬哲夫『1949年の大東亜共栄圏 自主防衛への終わらざる戦い』、新潮新書、2014 有馬哲夫の本がまた出た。あいかわらず、びっくりするような新事実が満載で、口が開いたまま。 この本の主題は、『大本営参謀は戦後何と戦ったのか』の続きで、日本再軍備をめ…

戦前昭和の社会 1926-1945

井上寿一『戦前昭和の社会 1926-1945』、講談社現代新書、2011 これは非常に勉強になり、かつおもしろかった本。太平洋戦争で「断絶」したと思われている戦前期の日本社会は、考えてみればあたりまえだが、戦後日本社会とちゃんとつながっているし、現代日本…

大東亜戦争 2

「大東亜戦争」2、大島渚監督、1968 大島渚のドキュメンタリー「大東亜戦争」の後編。最初に出てくるタイトルは、「岸信介 筆」でかなり笑った。大島渚のセンスは大したもの。 アッツ島玉砕、ビルマ独立宣言、日タイ条約、フィリピン独立宣言、大東亜宣言。…

大東亜戦争 1

「大東亜戦争」1、大島渚監督、1968 大島渚監督のドキュメンタリー。これは非常に貴重なもので、ほとんどが、戦中に撮影された日本側のニュースフィルムを編集したもの。ナレーションは、戸浦六宏と小松方正が入れているが、東條首相の声などは当然「実物」…

将軍権力の発見

本郷恵子『将軍権力の発見』、講談社、2010 講談社選書メチエの「選書 日本中世史」の3巻。ここでいう「将軍」は室町将軍のこと。 鎌倉時代末から始まって、だいたい足利義満から義教あたりまでの時期を扱う。主な注目点は、この時期、特に細川頼之が管領だ…

ヒトラー・ユーゲント

H.W.コッホ(根本正信訳)『ヒトラー・ユーゲント 戦場に狩り出された少年たち』、サンケイ出版、1981 サンケイの赤本で、ネタは、ヒトラー・ユーゲント。著者は、ドイツ人の歴史家だが、本人がヒトラー・ユーゲントの出身。それも当然で、ヒトラー・ユーゲ…

空挺作戦

チャールズ・マクドナルド、板井文也(訳)『空挺作戦 縦横無尽の奇襲部隊』、サンケイ新聞社出版局、1972 サンケイの赤本の、"Airborne"の巻。著者は、米陸軍史料編纂委員副主任という人。 各国軍、特に米英独3カ国の空挺部隊と、実際の作戦について書かれ…

日本はなぜ敗れるのか

山本七平『日本はなぜ敗れるのか ─敗因21ヶ条』、角川oneテーマ21、2004 これまで山本七平の本を読んだことがなかった。昔、山本の著作がよく読まれていた時には、毀誉褒貶の激しい人なので敬遠していたのだが、この本は読まれるべきもの。 小松真一『虜人日…

手榴弾・迫撃砲

イアン・フォッグ(関口幸男訳)『手榴弾・迫撃砲 塹壕戦の必殺兵器』、サンケイ新聞社出版局、1974 サンケイの赤本の第60巻。著者は、このシリーズの「大砲撃戦」と同じ人で、1926年生まれ、第二次大戦と朝鮮戦争に従軍し、その後イギリス陸軍の学校教官だ…

海底調査でよみがえるD-Day 後編

「海底調査でよみがえるD-Day」 (後編)、NHKBS1、2014.6.5 この回の見どころは、連合軍がノルマンディーの砂浜にかけた、仮設の埠頭。この鉄製の埠頭があったから、上陸部隊が海岸堡を確保した後で、物資を円滑に揚陸させられたのだ。 長大な埠頭を、干満…