授乳

村田沙耶香『授乳』講談社文庫、2010


これはちょっと前の村田沙耶香の作品。「授乳」「コイビト」「御伽の部屋」の3作入り。

いまと変わらぬ作風で、完全に頭がおかしい。一番好きなのは、「御伽の部屋」。著者は、性欲があっても異性がいらない世界を書き綴っているが、これもそう。最後には、主人公(女)自身が、自分でありながら他人でもある状態になっていて、異性どころか他人がいらない状態。「自分が探し求めていた理想の他者が自分の中にいた」といっている。

「授乳」は、家庭教師の男に乳を吸わせる話(もちろん、出ない)。「コイビト」はぬいぐるみ相手の恋愛の話。主人公の他者とつながっているようでつながっておらず、他者ではないものとつながっている感じがとても好き。

まだ「コンビニ人間」を読んでいないが、これも、近刊のエッセイもたのしみ。