2006-08-01から1ヶ月間の記事一覧
小谷野敦『中学校のシャルパンティエ』、青土社、2003 小谷野敦の音楽エッセイ。相変わらず中身はおもしろいけど、「シャルパンティエ」なんていっても、普通の人にはわからないのではないか(まあそれをねらっているのかもしれないが)。この本を読んで教え…
坂口安吾『ふるさとに寄する讃歌』、角川文庫、1971 安吾の初期の短編集。表題作よりも「黒谷村」のほうがいい。何もかもがドロンドロンした空気の中でうごめいている感じが好きだ。あと「姦淫に寄す」「波子」もよし。しかしどれも死とセックスばっかし出て…
日本経済新聞社編『北朝鮮クライシス』、日本経済新聞社、2006 今年7月のテポドン発射騒動についてまとめた本。分析というよりは、取材した情報を取り急ぎまとめて出したという本だが、こういう本は鮮度がかんじんだから、2ヶ月経たずに出版されたことの意味…
石井正紀『技術中将の日米戦争』、光人社NF文庫、2006 工兵出身で陸軍中将まで昇進し、陸軍の飛行場設営や燃料問題を管掌していた軍人、秋山徳三郎の伝記。軍のテクノクラートとして活動し、派手な戦歴がない地味な軍人の記録である。しかし、陸軍の昇進シス…
笹野みちる『泥沼ウォーカー』、PARCO出版、1998 ミュージシャンの著者がうつ病で泥沼にはまった状態でのエッセイと京都の紀行エッセイをあわせた本。自分について語っている部分は明るくはないけど、決して読みにくくはない。「超人計画」とは、その点おおち…
文春新書編集部編『論争 格差社会』、文春新書、2006 「格差論争」に関わる比較的短い文章を集めた本。この問題に関して発言している中心的な論者の一部はカバーしてあるので、誰が何をいっているのかをざっと知るためには(本当にざっとしかわからないが)…
滝本竜彦『超人計画』、角川文庫、2006 「NHKにようこそ」の著者の「妄想エッセイ」。ひきこもりの本なら小説よりエッセイのほうがおもしろいだろうと思っていたが、それは甘かった。「NHKにようこそ」は痛いところもあるにせよ、まあまあ読めたのだが、こちら…
坂口安吾『安吾史譚』、角川文庫、1973 坂口安吾の歴史関係のエッセイと紀行文。いってることはけっこうハチャメチャな気もするが(特に「道鏡童子」の項)、著者自身が「想像だ」といってるのだからまあいいでしょう。「柿本人麻呂」はこれもかなり想像が入…
竹中治堅『首相支配』、中公新書、2006 最近10年の政治的変化を「首相支配」の誕生として論じる本。清水真人「官邸主導」が政策決定過程での官僚支配に対する官邸支配の強化を議論していたのに対して、この本では自民党内の派閥支配から首相支配への移行を主…
「ハチミツとクローバー」、高田雅博監督、櫻井翔、蒼井優主演、「ハチミツとクローバー」フィルムパートナーズ製作、2006 原作のコミックは未読。TVアニメ版も見ていない。平日の日中の回の上映だったのに、けっこう客がいたのにはおどろいた。映画のほうは…
P.W.シンガー『戦争請負会社』、山崎淳訳、NHK出版、2004 長いこと読まなければと思っていてやっと読めた。ちょっとポップな感じの装丁とは違い、PMF(Privatized Military Firm)に関する研究、概説書。いわゆる傭兵の歴史にはじまり、それがPMFに拡張される…
鈴木真奈美『核大国化する日本』、平凡社新書、2006 日本の原子力政策と核拡散問題を結び付けて、原発、特にプルトニウムサイクル政策の放棄を主張する本。核燃料サイクルの章は、この手の啓蒙書としてはぎりぎりわかりやすく書かれていると思う。核兵器拡散…
毛利敏彦『大久保利通』、中公新書、1969 これも古い版の大久保利通の伝記。読んだのは1987年刊行の第16版。それだけ版を重ねているだけのことはあり、維新前後の政情と大久保利通の生涯が立体的にきちんと構成されている。一読して、明治維新という大変革が…
小谷野敦『バカのための読書術』、ちくま新書、2001 タイトルはちょっと奇をてらっていて、というか売れるためにキャッチーな題をつけたのだろうが、より正確には「知識はないが、これから勉強したいと思っている人のための方法論」というようなもの。ひさび…
中尾佐助『栽培植物と農耕の起源』、岩波新書、1966 古色蒼然とした岩波新書青版だが、内容は非常におもしろい。植物学の視点から農耕文化複合と文明の関係を論じるというエキサイティングなテーマに挑んだ名著。植物学とはまったく無縁の者でも、どんどん読…
多木浩二『天皇の肖像』、岩波新書、1988 明治期のはじめの二十年間で、天皇の肖像写真が「御真影」となり、天皇が末端の住民に可視化されるようになっていくプロセスを描く本。天皇の御真影が社会のすみずみに「下付」されることによって、自分たちが天皇を…
定方晟『憎悪の宗教』、洋泉社新書、2005 仏教学者である著者が、ユダヤ、キリスト、イスラムの三つの一神教を「聖なる憎悪」をその核心におく宗教として批判する本。キリスト教に対して相対的に多くの頁が割かれている。確かに聖書には常識的な道徳から見れ…
斉藤環、酒井順子『「性愛」格差論』、中公新書ラクレ、2006 精神科医の斉藤環と「負け犬」酒井順子の対談本。タイトルどおり、最近の格差論をパロった性愛についてのいろんな事柄がネタにされている。内容は非常におもしろかった。特に、「ヤンキー」「腐女…
工藤俊一『北京大学 超エリートたちの日本論』、講談社+α新書、2003 北京大学の日本語学科で日本語教育を担当していた著者の中国滞在記。二年間の見聞で、相手は日本語学科の学生だけということを割り引いても、中国人学生のレポートがそのまま載せられてい…
中谷美紀『ないものねだり』、マガジンハウス、2006 著者の初エッセイ集とのこと。それにしてもものすごく男っぽい感じの文章を書く人だなー、と感心する。というか性格が男らしいのかな。伝わってくるのは女優の仕事の大変さ。七化け八化けの仕事だから、当…
坪井秀人『戦争の記憶をさかのぼる』、ちくま新書、2005 敗戦後の戦争に関する記憶形成を理解するために、何かしら有益なところがあるかと思って読んでみたが、その期待はまったく裏切られた。はっきりいうと、著者の「譫言」の羅列以外のものになっていない…
清水真人『官邸主導』、日本経済新聞社、2005 村山政権から小泉政権にいたる間の経済政策の決定過程を、政策過程と政局の両面から描き出そうとした本。著者は日経で長年政治部、経済部に在籍し、この間の政治的変化について多くを知る立場にいて、情報量は豊…
清水美和『中国はなぜ「反日」になったか』、文春新書、2003 中国での「反日」の噴出をはじめとする対日姿勢の変遷を歴史的に検討した本。著者は長年中日新聞で中国報道を担当していて、中国側の事情については知悉している。 現在の中国の「反日」態度の直…
しりあがり寿『表現したい人のためのマンガ入門』、講談社現代新書、2006 表題の通り、「これからマンガを描こうとする人に向けた」マンガ入門、兼著者の漫画家としての過去と現在の告白。類書と違うところは、絵の描き方や道具の使い方についてはほとんど省…
群ようこ『日常生活』、新潮文庫、1993 著者の1992年の日記帳のようなエッセイ。というかそのまま日記帳。作家の生活とはこういうものか。書いては締め切り、書いては締め切り。まあそれはそうだろうけど。わたしにはまあムリ。当時の相場で原稿料は400字詰…
麻生幾『宣戦布告』上・下、講談社文庫、2001 これも今更という本だけど、読んだ。映画のほうは見ていない。たしかに小説としてはおもしろい。が、下手。細かいことを書き込みすぎている。北朝鮮のコマンドが攻めてくるということでは同じ『半島を出よ』と比…
滝本竜彦『NHKにようこそ』、角川文庫、2005 ひきこもりによるひきこもりの小説。なんというか非常に微妙な感じ。おもしろいのかというとそんなにおもしろくはない。つまらないかというと一息で読めてそれほど退屈はしなかったので、つまらないとは思わない…
櫻田淳、小浜逸郎『「弱者」という呪縛』、PHP研究所、2001 障害者で「右派」の櫻田と『「弱者」とはだれか』を書いた小浜が「弱者を聖化する」風潮を撃つ、という対談本。一番問題なのは、何を攻撃しているのかということがはっきりしていないこと。または…
玄田有史『働く過剰』、NTT出版、2005 若者と仕事に関する著者の見方をデータに即した分析をもとにして提示する本。「働かされすぎる」正社員を主に扱う第一部と、「働けない」ニート、無職を扱う第二部、若者と仕事に対する大人の態度を扱う第三部に分けて…
川口マーン恵美『ドイツは苦悩する』、草思社、2004 福祉、教育、環境、離婚、イスラム教徒、統一後の旧東ドイツといった切り口からの現代ドイツ事情の紹介本。副題に「日本とあまりにも似通った問題点についての考察」と付されているが、読了して納得。とに…