平家物語

角川書店編『平家物語 ビギナーズ・クラシックス日本の古典』角川書店、2011


角川のビギナーズ・クラッシクス版「平家物語」。章段ごとに、簡単な現代語訳の要約があり、編者が強調したいところだけ、抜粋の現代語訳と原文がつけられている。これは非常に読みやすく、初心者に親切な方法。この要約に飽き足らない人は、より細かい版を買って読めばよい。

改めて読むと、抜粋された多くの版は、戦争のところだけを抜き出しており、その間に挟んである小さいストーリーはほとんど取り上げられていない。そこは飛ばしても、話としては成り立つので、略してあるのだろうが、逆にそういう挿話はそこだけ読んでも読みがいがあるともいえる。

巻末の解説を読んで、驚いたのは、平家物語全体のプロデューサーは天台座主慈円だと書かれていること。現代の研究ではそういうことになっている。目的は死者の供養という仏教的なものだけではなく、内乱後の秩序の安定という即物的な目的もからんでいた。だから、九条兼実の弟で、頼朝とも交流があった慈円平家物語を編纂したのだという。

最後の巻が大原御幸で終わっていることは、もののあはれというにとどまらず、平家に対する法皇による許しを語ったもので、内乱の終わりをこのような形で宣言したもの。そのように説明されるといちいち納得するし、冒頭の平清盛の悪逆ぶりを宣言している部分も、内乱そのものの法皇・頼朝側からの正当化と考えれば辻褄があっている。

平家の語りも聞いてみたいが、さすがに時間が許さないかもしれない。この本は、とにかく勉強になった。