戸籍アパルトヘイト国家・中国の崩壊

川島博之『戸籍アパルトヘイト国家・中国の崩壊』講談社+α新書、2017


これも快著。中国社会分析として、おもしろい視点を提供している。一番の鍵は、農村戸籍都市戸籍農村戸籍保持者が9億人。都市戸籍保持者が4億人余りいるが、都市戸籍保持者のうち、富裕層は1億人くらい。日本人が豊かな中国人と認識しているのはこの1億人だけ。

問題は、この先に中国が経済発展を続けようとすれば、農村戸籍の9億人の所得を上げなければならないが、それはできないということ。共産党の権力は農村戸籍保持者からの収奪に依拠しており、現状を変える理由がない。現実に不動産バブルが経済成長の原資となっていて、その元は適当に農村戸籍から取り上げた不動産を開発して高値で転売すること。これをやめられない。

結局、中国も中進国の罠にはまり込み、経済成長は止まる。社会改革ができないので、仕方がない。腐敗摘発運動も習近平の敵を増やすだけ。あとは対外強硬策くらいしかすることはないだろう。

概ね妥当な分析だろう。