2007-03-01から1ヶ月間の記事一覧

君はピカソを知っているか

布施英利『君はピカソを知っているか』、ちくまプリマー新書、2007 布施英利によるピカソの入門書。はっきりいうと自分にはピカソの偉大さというものがまだよくわかっていない。そういう人も含めた美術の素人に向けて書かれている。ピカソの生涯、ピカソにい…

ビキニ事件の真実

大石又七『ビキニ事件の真実』、みすず書房、2003 ビキニ環礁の第五福竜丸事件で被爆し、その後語り部活動をしている著者の事件の記録とその後の半生記。ビキニ事件は被爆者運動のきっかけになった大事件なので、被害者は手厚い保護を受けられたのかと思いき…

夢のような幸福

三浦しをん『夢のような幸福』、大和書房、2003 三浦しをんのエッセイは全部読んだつもりだったが、まだ一冊残ってた。抜かっていた!しかしうれしい。「しをんのしおり」の2002年くらいから2003年あたりまでのもの。三浦しをんはエッセイをバラバラな出版社…

北朝鮮に潜入せよ

青木理『北朝鮮に潜入せよ』、講談社現代新書、2006 韓国映画「シルミド」で話題になった、韓国の対北朝鮮工作員の活動の全貌を描いた本。「シルミド事件」は派遣されるはずだった部隊が、結局派遣されないまま飼い殺しになったことで起こった事件だが、実際…

日中はなぜわかり合えないのか

莫邦富『日中はなぜわかり合えないのか』、平凡社新書、2005 2004年のアジアカップサッカーでの中国の反日暴動その他の事件を受けた、日中関係のこじれを中国側の立場から見ようとした本。著者は本書のタイトルを『日中友好時代は終わった!』としようとした…

アルゼンチンババア

「アルゼンチンババア」、役所広司、掘北真希、鈴木京香主演、長尾直樹監督、アルゼンチンババア製作委員会、2007 たまたま時間があったので見た。よしもとばななの原作は未読。掘北真希はいい女優になった。ケータイ刑事の時は大したことないとおもっていた…

夢窓疎石 日本庭園を極めた禅僧

枡野俊明『夢窓疎石 日本庭園を極めた禅僧』、日本放送出版協会、2005 夢窓疎石の作庭家としての側面に光をあて、夢窓の事跡を作庭と結びつけて論じると同時に、夢窓の庭の構成をひとつひとつ庭のデザインの面から再検討した本。著者は禅僧でありかつ庭園デ…

尻啖え孫市

司馬遼太郎『尻啖え孫市』、角川文庫、1969 雑賀党の首領、鈴木孫市を主人公にした司馬遼太郎の時代もの。手元の本は1997年発行で第五十版。ロングセラーだけのことはある。文庫本で600ページはあるが、いっこうにあきない。雑賀党の神業めいた鉄砲術にはち…

福岡市歴史散策

福岡地方史研究会(編)『福岡市歴史散策』、海鳥社、2005 博多に行ったときに、書店で『福岡県の歴史散歩』(山川出版社)を探したが、新版がなかった(まだ刊行されていないのか?)ので、代わりにこれを買ってきた。地元の出版社から出ているらしく、140…

夢の美術館 大阪コレクションズ

「国立国際美術館」、「夢の美術館 大阪コレクションズ」 中之島の国立国際美術館で25日までやっている展覧会。国立国際美術館、大阪市立近代美術館準備室、サントリー天保山ミュージアムの所蔵品から、20世紀美術を中心とする作品を集めて開いた展覧会。確…

ズービン・メータ、イスラエルフィルハーモニー管弦楽団

「ズービン・メータ、イスラエルフィルハーモニー管弦楽団」、R.シュトラウス、「ツァラトゥストラはかく語りき」、ドヴォルザーク、交響曲第9番「新世界より」、ザ・シンフォニーホール メータ、イスラエルフィルの日本公演。確か生でメータを聴くのはこれ…

鍋島

「大阪市立東洋陶磁美術館」特別展「鍋島」 九州国立博物館への貸し出し品がよかったのと、数日前の朝日新聞にこの展覧会の評が出ていたので、出かけてきた。 平日だが明日が祝日ということもあってか、かなりの混みよう。内容は質量ともにすばらしい充実ぶ…

鉄コン筋クリート

「鉄コン筋クリート」、二宮和也、蒼井優主演(声)、マイケル・アリアス監督、「鉄コン筋クリート」製作委員会、2006 これも前から見ようと思っていて、やっと見ることができた。原作のマンガは未読。舞台の「宝町」の描写がとてもいい。昭和30年代あたりの…

九州国立博物館

「九州国立博物館」(平常展) 機会があって、九州国立博物館にいくことができた。ここはとてもいい。建築はエスカレーターと動く歩道で期待感をもたせた先に、どーんと巨大な屋根。このあたりは中国風の伝統にもならっているような気がする。特別展は四月か…

市場の倫理、統治の倫理

ジェーン・ジェイコブズ(香西泰訳)『市場の倫理、統治の倫理』、日経ビジネス人文庫、2003 社会倫理の起源についての文明論的考察というような本。日本ではこういう本は非常に書かれないが、かなり深く歴史や人類学を含む広い分野にわたる教養がないと書け…

新・兵隊やくざ

「新・兵隊やくざ」、勝新太郎、田村高廣主演、田中徳三監督、大映、1966 兵隊やくざシリーズ三作目。前作でまたまた脱走した二人は、結局別の部隊に流れ込み、憲兵に追われてまた脱走。今度は女郎屋の経営をはじめる。ところがそこにひとくせある憲兵伍長の…

続兵隊やくざ

「続兵隊やくざ」、勝新太郎、田村高廣主演、田中徳三監督、大映、1965 勝、田村の「兵隊やくざ」シリーズ二作目。一作目のラストで部隊輸送の列車から客車を切り離して脱走した二人だが、機関車は途中で爆弾で脱線し、そのまま病院送りに。看護婦の小山明子…

秘密の花園

三浦しをん『秘密の花園』、新潮文庫、2007 三浦しをんの「女子高もの」。これはなかなかよく書けていると思う。カトリックの女子高に通う三人の女の子のおかしな感覚とちょっとだけ変化のある日常。三人のキャラクターの設定もよし。教師と恋愛関係にある淑…

ああ言えばこう食う

阿川佐和子、檀ふみ『ああ言えばこう食う』、集英社文庫、2001 阿川佐和子と檀ふみの往復エッセイ。食べ物関係が中心だが、いつもの男(結婚)ネタ、下ネタまで幅広く扱っている。第十五回講談社エッセイ賞、というだけあって、うまく書けている。どの話にも…

神秘主義

ジェフリー・パリンダー(中川正生訳)『神秘主義』、講談社学術文庫、2001 比較宗教学者によって書かれた宗教における神秘主義についての本。一神教から、仏教、ヒンドゥー教、ほかのインドの多神教、道教、神道、アジアやアフリカの多神教にいたるまで、非…

しをんのしおり

三浦しをん『しをんのしおり』、新潮文庫、2005 三浦しをんのエッセイは全部読んだはず、と思っていたら、これが残っていた。でもなんかトクをしたみたいでけっこううれしい。内容は相変わらず快調快調。里中満智子の「彼方へ」とか、マイナーなものまでまめ…

警視庁・特殊部隊の真実

伊藤鋼一『警視庁・特殊部隊の真実』、大日本絵画、2004 警察の特殊部隊SAT(の前身になるSAP)の要員だった著者による、特殊部隊の要員選抜と訓練について記した本。特殊部隊設立がダッカ事件をきっかけに行われたものの、当初は部隊の設置自体が秘密にされ…

極め道

三浦しをん『極め道』、光文社知恵の森文庫、2000 またまた三浦しをんのエッセイ。「しをんのしおり」の98年から2000年までの分。これで確か書籍になっている三浦しをんのエッセイは全部読んだことになるはず。もう三浦しをんの読み残しがないのかと思うと非…

中国的思考

蜂屋邦夫『中国的思考』、講談社学術文庫、2001 戦国期から南北朝あたりまでの中国の思想について断片的に書かれた論文、記事を集めた本。自然、水、死生観、言語と思惟、無、空、などといった概念についての文章が並べられている。「思惟と言語の間」「思惟…

死闘の本土上空

渡辺洋三『死闘の本土上空』、文春文庫、2001 朝日ソノラマから出ていた『本土防空戦』の改題。元のタイトルのほうがよかったような気がするが…。太平洋戦争での本土防空戦を総括した本。まさに刀折れ矢尽き、という言葉の通りで、1945年8月の敗戦時には日本…

アジア冷戦史

下斗米伸夫『アジア冷戦史』、中公新書、2004 表題はアジア冷戦史となっているが、実際は「冷戦期におけるアジア社会主義諸国関係史」という内容の本。著者はソ連研究の泰斗なので、ソ連から見た視点が中心的になってはいるが、アジアの社会主義諸国と東欧圏…

ぼんち

山崎豊子『ぼんち』、新潮文庫、1961 山崎豊子の初期の長編。手元の本は、1987年で39刷とある。大阪船場の足袋問屋の若旦那がたどる女遍歴の話。何より登場人物のキャラがたっている。旧家の誇りを一身に背負って、尊大で傲慢な喜久治の母と祖母、喜久治の5…

冷戦後

船橋洋一『冷戦後』、岩波新書、1991 文字通り、89年のベルリンの壁崩壊から、91年の湾岸戦争終結までの時期のルポルタージュ。未来予測の本ではないので、将来どうなるという断定的なことは書いてないが、それでも転換期にあたって将来を見通すということが…

テポドンを抱いた金正日

鈴木琢磨『テポドンを抱いた金正日』、文春新書、2006 金正日の「伝記」。じつは伝記というにはエピソードの積み重ねのような色合いが強く、編年的な普通の伝記ではない。しかし金正日の伝記は、北朝鮮公定の「お話金正日伝」を除けば、このような形でしか書…

フィデル・カストロ後のキューバ

ブライアン・ラテル(伊高浩昭訳)『フィデル・カストロ後のキューバ』、作品社、2006 タイトルはほぼ原題(After Fidel)に即しているが、内容はカストロ以後というよりは、フィデル、ラウルのカストロ兄弟の伝記に近い。キューバの支配体制の現状分析を期待…