2006-06-01から1ヶ月間の記事一覧

教養主義の没落

竹内洋『教養主義の没落』、中公新書、2003 大学における「教養主義」、つまり小難しい本を読むことで人格形成することがえらいという考え方がどうして起こり、どのように滅びたかということについての本。著者によれば大学での教養主義は大正時代に起こった…

核拡散

川崎哲『核拡散』、岩波新書、2003 核拡散の現状について概観した本。2003年末までの比較的新しいデータが載っており、書き方もわかりやすい。そういう点では評価に値する。 しかし肝心の内容はひどいもので、要するに反核運動の宣伝本。著者には核拡散の現…

移民と現代フランス

ミュリエル・ジョリヴェ『移民と現代フランス』、鳥取絹子訳、集英社新書、2003 フランスにおける移民問題を、主に移民本人や援助組織の関係者に対するインタビューを通じて明らかにしようとした本。マクロの統計数字ははじめのほうに若干あげられているが、…

武装解除

伊勢崎賢治『武装解除』、講談社現代新書、2004 紛争地域における武装解除の問題を著者のこれまでの体験に基づいてとりあげた本。東チモール、シエラレオネ、アフガニスタンの三つの地域で、著者が国連スタッフまたは日本政府スタッフとして参加した武装解除…

石油を読む

藤和彦『石油を読む』、日経文庫、2005 石油市場の最近の状況についての分析と石油市場全体の基本構造についての解説。後者の部分は著者のこれまでの著書の焼き直し。現在の石油価格の高止まりの原因について知りたかったので手にとってみたが、著者の指摘す…

告白

チャールズ・R・ジェンキンス『告白』、伊藤真訳、角川書店、2005 ブックオフに出ていたので(いずれ文庫化されるだろうとは思ったのだが)、思わず買ってしまった。内容的には特に驚くようなものではないが、とてもおもしろく読めた。特に、北朝鮮での生活…

人間は遺伝か環境か? 遺伝的プログラム論

日高敏隆『人間は遺伝か環境か? 遺伝的プログラム論』、文春新書、2006 タイトルにひかれて買ってみたが、どうもいまひとつ著者の主張がよくわからない。まず生物の形成が遺伝か環境かという二者択一ではないこと、遺伝的プログラムによっていて、その発現…

検証 非核の選択

杉田弘毅『検証 非核の選択』、岩波書店、2005 日本を中心にこれまで、核武装あるいは核武装政策の放棄の決定が各国でどのようになされてきたのかを検討した本。第二次大戦中の日本の原爆開発小史から最近の核拡散、拡散対抗にいたるまで、さまざまな国の事…

人権を疑え!

宮崎哲弥(編著)『人権を疑え!』、洋泉社新書、2000 ずいぶん前に買っていたのに目を通していなかったのでいまごろ読むことになってしまった。内容は執筆者によってばらばらで玉石混淆。いちばんまともなのは編著者の宮崎哲弥の「人権論の再構成」。しかし…

東アジア共同体

谷口誠『東アジア共同体』、岩波新書、2004 東アジア共同体は現実的に可能であり、また日本が目指すべき政策目標でもある、という明確な主張をもった本。著者は外務省で経済畑を歩いた人で、上滑りな議論はしていない。 日中関係がここまで悪い現在(この本…

嫌われ松子の一生

「嫌われ松子の一生」、中谷美紀主演、中島哲也監督、「嫌われ松子の一生」製作委員会、2006 一種のミュージカル映画のようなもの。原作は小説だそうだが、確かに原作をそのまま映画にすると見るのはきつそうな感じがする。音楽映画の体裁をとるという考え方…

多文明世界の構図

高谷好一『多文明世界の構図』、中公新書、1997 簡単に言うと大風呂敷をひろげた本。実際は肝心なところが破れていて、結論はダメだと思う。しかしおもしろい。 著者によると、生態系をもとにする社会文化環境が複合した圏域があって、それを「世界単位」と…

世界の汚職 日本の汚職

石井陽一『世界の汚職 日本の汚職』、平凡社新書、2003 著者はもとJICA職員で、ラテンアメリカを主なフィールドにしており、当地での汚職の実態には詳しい。それにしても、まあどこの国でもここまでやるかというくらい汚職はやっている。北欧などのごく一部…

韓国人はこう考えている

小針進『韓国人はこう考えている』、新潮新書、2004 タイトルは「韓国人の対外認識」とでもした方がよい。内容は対外意識の問題に集中しているから。日本に対する意識はいろいろなところで論じられているので目新しい発見はなかったが、対米、対北朝鮮関係に…

まだふみもみず

檀ふみ『まだふみもみず』、幻冬舎文庫、2003 ドラマがおもしろかったので、勢いでエッセイを買ってきてしまった。まあそれなりにおもしろく読める文章だが、どうもいまひとつ物足りない感じがする。前に朝日新聞だったかに連載していたエッセイはけっこうお…

アンダルシアの虹

「アンダルシアの虹」、中尾幸世主演、佐々木昭一郎演出、NHK製作、1983 川シリーズの二作目。前作同様、主人公が調律師で栄子という名前だという以外、物語上の連続性はない。今回はスペイン、アンダルシアが舞台。前作と違ってあまり川の場面は出てこない…

川の流れはバイオリンの音

「川の流れはバイオリンの音」、中尾幸世主演、佐々木昭一郎演出、NHK製作、1981 前作「四季~ユートピアノ~」の続編にあたるような作品だが、主人公がピアノの調律師という以外は微妙に設定が違っているので厳密な意味では続編とはいえないらしい。イタリ…

電波大戦

本田透『電波大戦』、太田出版、2005 「電波男」の著者が同じネタでオタクたちと対談し、シメに合コンする、という内容の本。ただし、「電波男」は未読。対談相手は、竹熊健太郎、岡田斗司夫、滝本竜彦、倉田英之。わたしは前の二人しか知らない。まあ、オタ…

四季~ユートピアノ~

「四季~ユートピアノ~」、中尾幸世主演、佐々木昭一郎演出、NHK製作、1980 女の子(中尾)が音の記憶とともに成長し、ピアノの調律師となり、昔の記憶と出会う話。数多くの賞をとっていて知っている人は知っている作品。たしかしばらく前にNHKアーカイブス…

半島を出よ

村上龍『半島を出よ』上、下、幻冬舎、2005 ごく近い将来、不況とインフレで経済破綻に瀕した日本では対外強硬路線が台頭し・・・となると、筋立ての背景としては「愛と幻想のファシズム」と同じ。今度は日本を襲う外からのショックが北朝鮮の特殊部隊になった…

赤い文化住宅の初子

松田洋子『赤い文化住宅の初子』、太田出版、2003 作者のマンガで初めて読んだ「泣かせもの」。しかしこれはほんとうに泣ける。いつもの作者の毒々しさに慣れていたので、思わずやられたという感じ。この貧乏と薄幸は80年代以降に生まれた人には描けない。ち…

羊をめぐる冒険

村上春樹『羊をめぐる冒険』、講談社、1982 これは面白かった。「風の歌を聴け」が、どこがおもしろいのかさっぱりわからなかったのがウソのよう。1980年代作品集のこの後の巻を読むのがとてもたのしみになってきた。へんな羊が血瘤を通じて「宿主」の中に入…

韓国人のナショナリズム

鄭大均『韓国人のナショナリズム』、岩波現代文庫、2003 著者は在日韓国人の日韓関係研究者。文庫化される前の単行本「日韓のパラレリズム─新しい眺め合いは可能か」は1992年刊行。著者の主張には今まで断片的な形で触れていたことはあったが、一冊通読した…

こんな自分と仲良くしたい そんなあんたと仲良くしない

町山広美、松田洋子『こんな自分と仲良くしたい そんなあんたと仲良くしない』、ミリオン出版、2005 帯にある「なりたい自分になれなくていい なれない自分に慣れたらいーじゃん バブルもデフレも見送って花の39年組(64年生まれ)の自意識飼い慣らしレッス…

ホームレスになった

金子雅臣『ホームレスになった』、ちくま文庫、2001 都庁の労働関係の部局で働く著者が、東京のホームレスの生態を自分の見聞に基づいて描写した本。文庫化される前の単行本は1994年刊行。最初の部分は会社のリストラ物語かと思ったが、リストラされた主人公…

俺たちの祭

「俺たちの祭」、中村雅俊、檀ふみ主演、斉藤光正監督、ユニオン映画、第5話「冬の色」、第6話「風の孤独」、1977-78 スカパーの無料開放デーでかかっていたので見てしまった。一度は過去に見ているはず。本放送で見た記憶はないのだが、いつ再放送を見たの…

京都議定書は実現できるのか

石井孝明『京都議定書は実現できるのか』、平凡社新書、2004 京都議定書採択以後の、議定書の削減目標達成に向けての努力と問題点を日本に関して述べた本。日本における温暖化ガスの削減コストは高く、国内実施のみで議定書の削減目標を達成することは困難。…

大植英次/ハノーファー北ドイツ放送フィルハーモニー ワーグナー演奏会

指揮 大植英次 管弦楽 ハノーファー北ドイツ放送フィルハーモニー ワーグナー 「リエンツィ」序曲 ジークフリート牧歌 「ワルキューレ」第一幕(演奏会形式) ジークムント:ロバート・ディーン・スミス ジークリンデ:リオバ・ブラウン フンディング:クリス…

地球温暖化の政治学

竹内敬二『地球温暖化の政治学』、朝日新聞社、1998 京都議定書調印までの、地球温暖化問題の交渉過程をまとめた本。著者は朝日新聞の記者としてこの問題を継続的にフォローしてきた人なので、交渉の節目節目での各国政府やNGOの動きが丹念に生き生きと描…

トラちゃん

群ようこ『トラちゃん』、集英社文庫、1989 著者の飼ってきたペットにまつわるエッセイ。奥付を見ると初刷が1989年だが、自分が持っているものは2000年で44刷。驚いた。 金魚、インコ、十姉妹、文鳥、犬、猫、モルモット、ハツカネズミという取り上げられて…