自衛隊の闇組織

石井暁『自衛隊の闇組織 秘密情報部隊「別班」の正体』講談社現代新書、2018


著者は共同通信編集委員。この本は、「陸幕運用支援・情報部別班」のレポート。

「別班」は、陸上自衛隊ヒューミント組織。人数ははっきりしていないが、数十人規模か。メンバーは、情報学校の成績優秀者から選ばれ、ケースオフィサーとして、ロシア(ソ連)、中国、北朝鮮の情報収集にあたっている。この部隊が集めてきた情報は、防衛大臣には報告されておらず、他の情報機関(内閣情報調査室や警察、公安調査庁など)と連携して、アメリカに行っていることが示唆されている。

この機関、昔共産党が端緒をつかんで赤旗で書いたことがあり、その結果は本にもなっているが、それを含めて取材の過程と結果を丹念に書いており、情報機関の実態にここまで迫れたのだから、記者としては大成果。

陸幕長の経験者が何と言っているか、この部隊にかつて在籍した者が何と言っているか、防衛省内局はどうなのか、それぞれの人の反応から、この組織が何をしているのかがわかる。

また、別班が特殊作戦群と共同して、海外での特殊作戦を実行することを考えていることも明らかにされている。実際にどのような状況で別班と特殊作戦群が結びつくのかは、この本だけではわからないが。

非常に情報の多い本。長年の取材の成果が読めるのはありがたい。