漢字と日本語

漢字と日本語高島俊男『漢字と日本語』講談社現代新書、2016


一昨年出ていた本だが、あいかわらず勉強になるところだらけ。

白川静はまた別のレベルになると思うが、現用されている言葉の語源でも、これだけ追求されていると、こんなに勉強になる。「兵站」もぜんぜん気がついていなかったが、兵站のタンは中国語で「駅」であり、この字が日本語に定着している例はほとんどない。

それからやはり中国における漢字改革がおもしろい。日本もそうだが、漢字はあまりにも数が多いし、覚えにくい。表意文字だからそうなのだが、中国も、60年代くらいまでは、すべて漢字を廃してアルファベットで表記する計画だった。簡体字はその途中の過程にあるもの。しかし、漢字廃止はあまりにも抵抗が強くて結局できなかった。ピンインは、辞書の配列には残ったが、それが漢字を代替するということはなかった。

逆に今の中国では昔の繁体字を部分的にでも復活させよということになっている。中華人民共和国、というか華夏というものが他の字であっては意味が違ってしまうから困るのだ。中華民族というようなことを言い出した時点で、昔の文化との連続性を重視せざるを得ない。

どこを読んでも楽しく、いちいち学びが増える。ありがたい本。