習近平のデジタル文化大革命

川島博之『習近平のデジタル文化大革命講談社+α新書、2018


これは好著。現在の中国の政治路線を説明するだけでなく、中国の歴史的な構造や文化的な構造も併せて分析できており、全体を見通した中国社会論になっている。

中国は今がバブルの終末期。人口減少の手前にいるので、これはやむを得ない。問題はバブルが飛んでしまうと、経済的な打撃が、社会的混乱や政治的混乱に直結すること。習近平の抑圧路線はこの結果。

中国共産党の支配を持続させるためには、汚職摘発をせざるを得ないが、それをしたとしても下流層の不満を抑えることはできず、対外的な強硬策に出る可能性もある。何が起こるかはわからない。

著者の知り合いである中国人の描写は、非常におもしろく、コラムにある、中国社会の断片も非常に的を射ていると思う。中国に長年行き続けた著者ならではできないこと。

中国に行って材料を集めようとすると、中国政府に目をつけられるようなことはできず、そのため中国研究者は筆が鈍ってしまう。中国人はしかたがないが、日本人研究者ですら同じ。現代中国政治を研究している人の本は、よほど注意していないと読めない。暗澹たる話。