2006-05-01から1ヶ月間の記事一覧

八月十五日の神話

佐藤卓己『八月十五日の神話』、ちくま新書、2005 八月十五日がどのようにして「終戦記念日」として認識されていったかという問題をメディアの観点から追った本。一部には知られていることだが、日本政府がポツダム宣言を受諾したのは八月十四日、軍への停戦…

電車男

中野独人『電車男』、新潮社、2004 ということで、映画がそこそこ楽しめたので、ブックオフで本を手にいれて読んでみた。やっぱりこっちのほうが映画より数段いい。テレビドラマの方はみていないけど、この話を映画やテレビにしようとすると、やっぱりムリな…

間宮兄弟

「間宮兄弟」、佐々木蔵之介、塚地武雅主演、森田芳光監督、間宮兄弟製作委員会、2006 森田芳光の新作でストーリーのさわりを聞いてちょっと興味をひかれたので見に行ってみた。佐々木と塚地の間宮兄弟がカレーパーティーを開いて、常盤貴子と沢尻エリカを招…

人生カチカチ山

松田洋子『人生カチカチ山』、角川書店、2001 SPA!に「秘密の花園結社 リスペクター」を連載していた松田洋子の紀行マンガ。噴火直後の北海道、有珠山、ラスベガス、北朝鮮と何の脈絡もなくいろんなところに出かけて取材した結果をマンガにまとめたもの。初…

電車男

『電車男』、山田孝之、中谷美紀主演、村上正典監督、電車男製作委員会、2005 いきなり、しかもいまごろ電車男。それも映画。まだ原作は読んでいない。 非常に期待値が低かった分、見た後の印象としては「思っていたよりはよかった」。クライマックス、電車…

日本共産党

筆坂秀世『日本共産党』、新潮新書、2006 元日共中央委幹部会委員、政策委員長だった著者の内部告発本。著者が高位の党幹部で内部事情を知悉する立場にあったことで、本書の記述は著者が直接見聞するか、当事者が著者にじかに語ったことが元になっている。本…

参謀本部と陸軍大学校

黒野耐『参謀本部と陸軍大学校』、講談社現代新書、2004 明治維新から大東亜戦争に至る日本陸海軍の統帥問題を、特に陸軍大学校という高級将校養成機関に焦点をあてて説明した本。タイトルの通り、陸軍とその人事、教育システムに主に頁をさいているが、陸海…

環境政治入門

松下和夫『環境政治入門』、平凡社新書、2000 環境問題をめぐる政治について、特に日米両国の過程を比較することに焦点をあてた本。著者は環境庁出身で長年この問題についての実務に携わっていた人なので、そこからの視点も加味されて読みやすい、まとまった…

戦争民営化

松本利秋『戦争民営化』、祥伝社新書、2005 タイトルの割に内容の薄い本。はっきりいって、2章から4章までは全部いらない。かつての戦争では傭兵が使われていたことは周知の事実だし、個々の戦闘での傭兵の戦いぶりは、「戦争民営化」というこの本の主題に関…

びんぼう草

群ようこ『びんぼう草』、新潮社、1990 短編集。表題のとおり、ちょっと貧乏くさい日常の半ばエッセイのような感じ。著者の小説にはハズレもあるのでどうかなとおもったが、これはよかった。半分小説、半分エッセイというところがうまくいっているポイントか…

世界の果て

ポール・セロー『世界の果て』、村上春樹訳、文藝春秋、1987 たまにいく飲み屋の名前と同じ題だったので、思わず借りてきてしまった。もちろん村上訳という理由もある。短編集だが、表題作の「世界の果て」はとてもいい。あとは、「コルシカ島の冒険」「便利…

情報と戦争

江畑謙介『情報と戦争』、NTT出版、2006 情報と戦争の関係についての一種のカタログ。RMAとサイバースペースにおける戦いにそれぞれ数章をさいて、そこでの戦いのありようをさまざまな形で示している。江畑謙介の本なので情報量は豊富。写真が豊富で、よくい…

ネオナチと極右運動

フランツィスカ・フンツエーダー『ネオナチと極右運動』、池田昭、浅野洋訳、三一新書、1995 ドイツの極右運動を概観した本。政党から、運動、ジャーナリズム、テロ行為、新右翼などについて、戦後まもない時期から90年代初めまで手広くサーベイされている。…

無印良女

群ようこ『無印良女』、角川文庫、1988 家にはなぜか群ようこのエッセイや小説がけっこうおいてある。といっても10冊くらいか。これを再読していて、ふと気がついて群ようこで検索をかけて見たら、紀伊国屋bookwebで158冊出てきた。エッセイストだから点数は…

富岡多恵子集2

富岡多恵子『富岡多恵子集2 小説1』、筑摩書房、1998 タイトル通り、富岡多恵子の小説集。最初の小説、「丘に向ってひとは並ぶ」から、「動物の葬禮」までの作品が発表順に並べてある。 富岡多恵子は久しく読んでいなかったが、あらためて読んでみるとやっ…

サージャント・グルカ

谷甲州『サージャント・グルカ』、中央公論新社C Novels、2004 ネパールのグルカ兵をネタにした話。第二次大戦時の日本軍との戦闘と、フォークランド紛争時のアルゼンチン軍との戦争が二重写しにされている。 谷甲州の作品としてはちょっとどうか。今まで読…

黒いスイス

福原直樹『黒いスイス』、新潮新書、2004 日本では一般によいイメージが流通しているスイスの暗黒面を扱った本。ジプシーの子供の隔離政策、対戦中のユダヤ人の受入れ拒否、大戦中の反ドイツ活動への抑圧、核開発計画、相互監視社会、難民受入れや非欧州人の…

げんしけん

木尾士目『げんしけん』1-7、講談社アフタヌーンKC、2002-2005 大学のオタクサークルをネタにしたマンガ。たまたまキッズステーションでアニメ化されたものを見てしまったので読んだ。おもしろい。 キャラの配置がいい。濃いオタクとぜんぜんオタクじゃ…

刑法三九条は削除せよ!是か非か

呉智英、佐藤幹夫(共編)『刑法三九条は削除せよ!是か非か』、洋泉社新書y、2004 刑法三九条(心神喪失、心神耗弱者への刑罰の免除、減軽規定)をめぐる議論を集めた本。賛否あるいは賛否とは別の視点から問題を見た論考が幅広く集められており、この問題…

黒船の世紀

猪瀬直樹『黒船の世紀 【ミカドの国の未来戦記】』、小学館、1993 第二次大戦以前に日米で刊行された「日米戦争についての未来戦記もの」を扱う本。水野広徳の「次の一戦」はタイトルと簡単な概要だけは聞いたことがあったが、それ以上のことを知らなかった…

アメリカに「NO」と言える国

竹下節子『アメリカに「NO」と言える国』、文春新書、2006 言いたいことはわからないでもないが、ちょっと事実の誤りや認識のゆがみが多すぎて、首をかしげてしまう本。著者はフランスの「ユニバーサリズム」に対して英米(著者は「アングロサクソン」とい…

歴史認識を乗り越える

小倉紀蔵『歴史認識を乗り越える』、講談社現代新書、2005 東アジアの歴史認識問題を扱うという点で、古田博司「東アジア反日トライアングル」と同じテーマを扱う。もっとも結論はかなり違うが。著者の結論は簡単にいえば、日本が、特に韓国との関係で「謝罪…

勝利なき戦い 朝鮮戦争

ジョン・トーランド『勝利なき戦い 朝鮮戦争』上下、千早正隆訳、光人社、1997 第二次大戦の戦記で著名なトーランドによる朝鮮戦争史。上下巻で700ページ以上あり、朝鮮戦争の展開を、主要な戦役については俯瞰的に、個々の兵士、戦闘については虫瞰的に、さ…

中華人民共和国史

天児慧『中華人民共和国史』、岩波新書、1999 人民共和国成立以後に焦点をあてた簡略な通史。特に文化大革命と改革開放政策の採用に焦点があてられ、比較的丁寧に書かれている。新書版、しかも200ページというサイズで中国の現代史を過不足なく書き上げると…

文明崩壊

ジャレド・ダイアモンド『文明崩壊』上下、楡井浩一訳、草思社、2005 ダイアモンドが前著『銃、病原菌・鉄』で文明の興隆とその要因を取り上げたのに対して、本書で文明崩壊(著者が取り扱う事例はゆっくりした縮小過程ではなく急速な破滅なので、こちらの言…

北朝鮮からの脱出者たち

石丸次郎『北朝鮮からの脱出者たち』、講談社+α文庫、2006 同著者の『北のサラムたち』、2002を加筆改題したものなので、古い事象も入っているが、脱北者問題について書かれたルポルタージュの中では非常によく書かれた本。主に中国の朝鮮族居住地帯での取材…

東アジア「反日」トライアングル

古田博司『東アジア「反日」トライアングル』、文春新書、2005 一種の「奇書」というべき本。著者はやや変わった経歴の朝鮮研究者だが、これは学問的に書かれたというよりは、個人の見解、その底にある感情のようなものがかなりストレートに出ている本で、エ…

男であることの困難

小谷野敦『男であることの困難』、新曜社、1997 第一部は漱石と志賀直哉を題材にした批評論文で、これは漱石と志賀の該当書を相当読み込んでいるか、日本文学を専攻する研究者でないとほとんど読めない。しかし第二部、第三部は非常におもしろい。特に「外国…

北朝鮮最終殲滅計画

相馬勝『北朝鮮最終殲滅計画』、講談社+α新書、2006 駄本。まあいろいろ調べているということはわかる。しかし調べたことをただ並べただけでは本にはならない。そういうことのいい見本のような本。 著者はクリントン政権期の米軍の北朝鮮攻撃計画を取り上げ…

公安化するニッポン

鈴木邦男『公安化するニッポン』、WAVE出版、2005 鈴木邦男が元公安関係者(公安警察、公安調査庁)4人と対談したものをまとめた本。あまり上の階級まで昇進した人はいないことと、退職したとはいえ暴露の内容に一線がひかれているので、それほど新味のある…