2006-10-01から1ヶ月間の記事一覧

黙って行かせて

「黙って行かせて」、ヘルガ・シュナイダー原作(高島市子、足立ラーベ加世翻訳)、横山玲子脚色、樫山文枝、南風洋子主演、保科義久演出、NHK FMシアター、2006.10.28放送 NHKのオーディオドラマを聴いただけで原作は読んでいない。だから原作に対する評価…

シビリアン・コントロールとデモクラシー

L.ダイアモンド、M.F.プラットナー(中道寿一監訳)『シビリアン・コントロールとデモクラシー』、刀水書房、2006 1995年にワシントンD.C.で開かれた政軍関係と民主主義に関するセミナーに提出されたペーパーをまとめたもの。オリジナルは1996年に出ているの…

ごくらくちんみ

杉浦日向子『ごくらくちんみ』、新潮文庫、2006 酒肴になる珍味を題材にした掌編小説集。恥ずかしいことながら、この本を読んではじめて掌編小説というのが何かということを知った。原稿用紙三枚あまり(1300字)というのは書きやすいボリュームなのかどうか…

神様のパズル

機本伸司『神様のパズル』、ハルキ文庫、2006 飛び級で大学の物理学科に入学した16歳の天才少女と、就職も決まらず卒業も危ないダメダメ学生の主人公が、「無から宇宙をつくる」という課題でチームを組むことになり・・・という設定のSF。話の核にある宇宙論の…

韓国のナショナリズム

鄭大均『韓国のナショナリズム』、岩波現代文庫、2003 日本、韓国、アメリカで生活した著者が、韓国のナショナリズムを批判的に分析した本。現在ではそうした立場の本はかなりでているから珍しくはないが、オリジナルは1992年に出ているので、その時期にこう…

「国際化」の中の帝国日本

有馬学『「国際化」の中の帝国日本 日本の近代4』、中央公論新社、1999 同じ中公の日本の近代、通史編の第4巻。日露戦争後、普通選挙制の樹立までの期間、だいたい大正時代を扱う。主題は大正デモクラシーの再検討ということで、明治藩閥政権と昭和軍部政権…

明治国家の完成

御厨貴『明治国家の完成 日本の近代3』、中央公論新社、2001 中公の「日本の近代」シリーズ、通史編の第三巻。だいたい日清日露戦争の少し前からの時期を扱うが、対外政策にはあまり紙数を裂かず、議会開設とその後の元老、藩閥勢力と政党の関係が詳述されて…

帝都東京・隠された地下網の秘密

秋庭俊『帝都東京・隠された地下網の秘密』、新潮文庫、2006 戦前からあった東京の地下鉄は銀座線だけだ、ということになっているが、それは事実ではなく、実は多くの地下鉄や地下道路などの施設が建設されていたと主張する本。細部の真偽は確かめようがない…

CO ケースオフィサー

麻生幾『CO ケースオフィサー』上、下、扶桑社、2004 アルカイダと元イラク諜報機関がつながって、日本に対して天然痘ウィルスによるバイオテロをしかけてくるという話。上巻のはじめのほうはやや話がぐずぐずしているような気がしないこともないが、バイオ…

ドイツの安全保障政策

中村登志哉『ドイツの安全保障政策』、一藝社、2006 ドイツの安全保障政策の変化を、湾岸戦争時から、イラク戦争、メルケル政権の誕生まで一貫してフォローしている本。いつの時点でどういうことが争点になり、それがどう決着したかというだいたいのことがわ…

沖で待つ

絲山秋子『沖で待つ』、文藝春秋、2006 著者の芥川賞受賞作。相変わらず上手の出来で、読んでて気持ちいい。住宅設備の営業をしている主人公と同期入社の男の子の友情物語。芥川賞の選評をみると、仕事の内容についてのていねいな書き込みとか、構成力とかが…

教養のためのブックガイド

小林康夫、山本泰編『教養のためのブックガイド』、東京大学出版会、2005 東大教養学部のスタッフが作成した「教養」を身につけるためのブックガイド。当然「教養とは何か」という問題が出てくるが、それについては、第二部で座談会形式で議論されている。人…

三千年の海戦史

松村劭『三千年の海戦史』、中央公論新社、2006 古代ギリシャから現代に至る三千年の海戦史を概観し、そこから海洋戦略について考えようという本。意図はたいへん野心的。しかしそれが成功しているかということになると・・・。著者は個々の戦史を細かく描くこ…

米軍再編と在日米軍

森本敏『米軍再編と在日米軍』、文春新書、2006 米軍の世界的な再編戦略と在日米軍の配置と基地再編、日米の防衛協力関係の関連を論じた本。類書は他にも多いが、本書は新書ながら情報量の多さではきわだっている。あとがきに本書をまとめるのに6年かかった…

ローズ・イン・タイドランド

「ローズ・イン・タイドランド」、ジョデル・フェルランド主演、テリー・ギリアム監督、イギリス=カナダ、2005 テリー・ギリアムの新作。「不思議の国のアリス」をモチーフに使いながら、映画の中身はやっぱりテリー・ギリアムで、毒々しい悪夢のような世界が満…

ぼっけえ、きょうてえ

岩井志麻子『ぼっけえ、きょうてえ』、角川書店、1999 これもいまさら感があるが、岩井志麻子の有名作品といえばコレなので読んでみた。非常にうまい。こんな上手な小説にはなかなかお目にかからない。舞台はどれも岡山の僻村。岡山といっても美作の山間だっ…

ヨーロッパの城と艦隊

アラン・ギイェルム(大山正史訳)『ヨーロッパの城と艦隊』、大学教育出版、2000 原題は「石と風」らしい。そっちのほうがかっこいいが、訳書の題がそれでは内容がすぐにわからないから仕方ないかもしれない。で、「らしい」というのは、驚いたことにこの訳…

日本の軍事システム

江畑謙介『日本の軍事システム』、講談社現代新書、2001 副題の「自衛隊装備の問題点」の方が、この本の内容をより正確に表している。この手の本は鮮度が重要だということは承知の上で、現在もなお価値のある本といえる。基本的な著者のスタンスは、自衛隊の…

ニート

絲山秋子『ニート』、角川書店、2005 短編集。表題作「ニート」と「2+1」が実質、前後編のようになっている。主人公がニートを拾って(元々の知り合いなのだが)、家に持って帰って、また出て行かれる。そんな話。なんか捨て猫を拾うような愛情があり(主…

吉田茂とその時代

ジョン・ダワー(大窪原二訳)『吉田茂とその時代』上・下、TBSブリタニカ、1981 吉田茂の浩瀚な評伝。著者の意図は、吉田茂の生涯を戦前の外交官生活と戦後の首相時代との連続性に焦点をあてて描き出すことにより、戦前の帝国日本と戦後の民主国家日本の連…

外国語の水曜日

黒田龍之助『外国語の水曜日 学習法としての言語学入門』、現代書館、2000 タイトルどおり、言語学を題材にして外国語学習について論じている本。といっても、半分くらいは著者の身辺での外国語にまつわるエッセイみたいなもので楽しく読める。いまさらなが…

最後の海軍大将・井上成美

宮野澄『最後の海軍大将・井上成美』、文春文庫、1985 敗戦直前に海軍大将になり、それまでの間、主に海軍軍政に活躍した井上成美の伝記。戦争末期に井上が海軍兵学校校長になるまでの記述にはどうも精彩がない。阿川弘之の「米内光政」と一部がかぶっており…

やさしい訴え

小川洋子『やさしい訴え』、文藝春秋、1996 夫の浮気がもとで家出して、別荘にこもってカリグラフィーの仕事をしている主人公が、近所に住んでいるチェンバロ職人とその弟子(女)と出会い、そのうち主人公と職人はデキてしまうのだが・・・、というような話。…

絲的メイソウ

絲山秋子『絲的メイソウ』、講談社、2006 やっと図書館で予約していたのが来た。絲山秋子はきっとエッセイがおもしろいと思っていたが、期待にたがわずおもしろかった。小説はこれでいいとして、やっぱり著者はエッセイ向けの人だと思う。全編七五調の「世の…

ヴァイブレータ

「ヴァイブレータ」、寺島しのぶ、大森南朋主演、廣木隆一監督、「ヴァイブレータ」製作委員会、2003 廣木隆一、寺島しのぶコンビの「やわらかい生活」がよかったので、このDVDを借りてきた。夜のコンビニでうろついていた30過ぎの女が、そこで出会ったトラ…

薬でうつは治るのか?

片田珠美『薬でうつは治るのか?』、洋泉社新書y、2006 精神科医の著者が、新型の抗うつ薬による薬物療法中心、マニュアル偏重の診断といった精神治療の現状に疑問を投げかける本。向精神薬の発見から、その後の論争を経て現在の「ハッピードラッグ」の流行…

米内光政

阿川弘之『米内光政』、新潮文庫、1978 首相、終戦時の、そして最後の海軍大臣を務めた米内光政の伝記。さすがにこれは対象が有名人で、書く材料も豊富にそろっており、戦後まもなく亡くなった人物の伝記ではあるが、米内光政の人物像が立体的にきちんと描き…

書く女

二兎社公演「書く女」、作、演出永井愛、出演、寺島しのぶ、筒井道隆ほか、世田谷パブリックシアター 樋口一葉のお話。二幕物。最初のほうはダラダラしてるなと思ったが、二幕目の後半、一葉の晩年のあたりからはぐんぐん緊張感が高まってきてよい芝居になっ…

私小説

岩井志麻子『私小説』、講談社、2004 ベトナム人と韓国人の愛人をもつ主人公がごはんをたべるような性欲と心の穴を埋めるために、日本とホーチミンとソウルを行き来する話。主人公の性欲がどのへんからわいてくるのか、わたしにはよくわからないが、その欲望…

北朝鮮「楽園」の残骸

マイク・ブラツケ(川口マーン恵美訳)『北朝鮮「楽園」の残骸』、草思社、2003 著者は、ドイツのNGO「カップ・アナムーア」、「ドイツ世界飢餓援助」のメンバーとして四度訪朝、本書は1999年から2003年までの北朝鮮の状況についての記録。ノルベルト・フォ…