聖書、コーラン、仏典

中村圭史『聖書、コーラン、仏典 - 原典から宗教の本質をさぐる  』中公新書、2017


これは良書。新旧両約聖書、コーラン、仏典と、ヒンドゥー儒教古事記(こっちは簡単)をまとめてある本。

もちろん、ただの要約ではつまらないが、聖典のあり方を横に考察することを通じて、それぞれの宗教の違いがわかるように構成されている。非常にありがたい。

仏典がなぜわかりにくいのか、あらためてわかった。聖書のような物語になっているものは、仏典の中のほんの一部でしかなく、抽象的な言葉や詩を組み合わせたものがほとんど。これは一般人には取り付けない。あまりに数も量も多く、仏教僧であっても、全部を理解するのは無理だし、仏典相互の関係がわからないと、読解もできない。一般人はお経の一部を呪文として暗唱することができるだけ。

聖書はその点はよくできていて、読み物として成立するようになっている。これは編纂者の力量とある程度は意図があったから。コーランは法の集成で、かつ詩でもあるので、かなり知的な人でないと取り付くのがむずかしい。ただ量は制限されているので、その点では仏典に比べてまし。

それぞれの聖典が成立した事情や社会のあり方と組み合わせてわかるようになっているので、考察に役立つし、興味があればより掘り進むガイドもついている。非常に親切な本。