2006-11-01から1ヶ月間の記事一覧

アドレナリンドライブ

「アドレナリンドライブ」、安藤政信、石田ひかり主演、矢口史靖監督、アドレナリンドライブ製作委員会、1999 これはおもしろかった。安藤政信と石田ひかりがひょんなことからヤクザの裏金を手にしてしまい、ヤクザに追われて逃げ出すのだが、話はそううまく…

戦争の正しい始め方、終わり方

兵頭二十八、別宮暖朗『戦争の正しい始め方、終わり方』、並木書房、2003 ちょっと困った本。特に別宮のほうの記述に細かい不正確な内容が多すぎる。例えば前半部分では国際法の解釈。まず国際法の議論をするのなら、解釈の典拠を示すべきだし、先制攻撃が侵…

かもめ食堂

「かもめ食堂」、小林聡美、片桐はいり、もたいまさこ主演、荻上直子監督、かもめ商会、2006 夏くらいに公開されていた時には見逃してしまい、たまたま再上映していたので見ることができた。小林聡美、もたいまさこ、とくれば「やっぱり猫が好き」だが、荻上…

伊藤博文と安重根

佐木隆三『伊藤博文と安重根』、文藝春秋、1992 伊藤博文暗殺事件を公判記録に基づいて再構成したドキュメンタリーノベル。伊藤側と安側の両方から暗殺事件にいたる過程をていねいに描いている。 日露協商の再強化を図る伊藤に対して、安重根は確かに剛直、…

雪舟への旅

「雪舟への旅」、山口県立美術館、2006.11.1-11.30 雪舟の大規模な展覧会。雪舟の主な作品のほか、狩野派や横山大観の模写、雲谷派の作品まで幅広く集められている。これだけのものを集めて一ヶ月だけ、それも山口だけでほかを巡回しないとは、ほんとうにも…

若者殺しの時代

堀井憲一郎『若者殺しの時代』、講談社現代新書、2006 物騒な表題だが、週刊文春のコラムで知られた著者の80年代から90年代の時代と若者についての論集。80~90年代が取り上げられているのは、この時期に「若者文化」を商品化するシステムが完成し、若者が「…

男子の本懐

城山三郎『男子の本懐』、新潮文庫、1983 金輸出解禁政策をめぐる浜口雄幸と井上準之助の生涯を描いた城山三郎の代表作。しかし一読してみて、「そんなに傑作といわれるような作品なのか」という疑問を禁じえない。確かに浜口と井上の伝記小説としては、それ…

バロン

「バロン」、ジョン・ネビル、サラ・ポリー主演、テリー・ギリアム監督、アメリカ=イギリス=西ドイツ、1988 テリー・ギリアム監督の「ほら男爵の冒険」の映画バージョン。ジョン・ネビルはうまい。他の役者も達者ぞろい。なにげにロビン・ウィリアムズやデビ…

あたらしい武士道

兵頭二十八『あたらしい武士道』、新紀元社、2004 兵頭二十八の「武士道」についての本。著者はヨーロッパにおける「市民」=自己の安全を守る能力を持ち、かつ共同体の防衛に参加できる者、と考えているので、武士道の探求とは著者にとって「日本に西洋的な…

陸軍戸山流で検証する 日本刀真剣斬り

兵頭二十八、旗谷嘉辰『陸軍戸山流で検証する 日本刀真剣斬り』、並木書房、2006 表題を見ると日本刀の話題のみに集中しているように見えるが、実際は刀以外の打物、馬、弓矢などを含めた古武術全般に関する対談本。旗谷嘉辰の名前は知らなかったが、陸軍戸…

ガントレット

「ガントレット」、クリント・イーストウッド、ソンドラ・ロック主演、クリント・イーストウッド監督、アメリカ、1977 ずいぶんとひさしぶりに見た。前に見たのは学生のころか?イーストウッドのしょぼくれぶりがいいし、ソンドラ・ロックの娼婦役はぴったりハ…

ヴァイブレータ

赤坂真理『ヴァイブレータ』、講談社文庫、2003 以前見た寺島しのぶ主演の映画の原作なので手に入れて読んでみた。主人公の内部の記憶の部分がけっこう書き込まれていて、そこが映画では省かれているということがわかる。まあそれはそれでありか。しかしその…

陽のあたる坂道

「陽のあたる坂道」、三浦友和、檀ふみ主演、吉松安弘監督、東宝映画、1975 どうも見ているうちに三浦友和がやたら石原裕次郎のマネっぽいなあと思っていたら、案の定最初の映画化は石原裕次郎、北原三枝の主演で1958年に公開されており、さらに二度目の映画…

千一夜物語1

(佐藤正彰訳)『千一夜物語1』、ちくま文庫、1988 千一夜物語の全訳本。フランス語訳からの重訳だが、訳語や注は十分配慮されており、アラブの香りを十分味わうことができる。全10巻のうちまだ1巻しか読んでいないのだが、基本的に「大人用の娯楽読み物」…

紛争と難民 緒方貞子の回想

緒方貞子『紛争と難民 緒方貞子の回想』、集英社、2006 緒方貞子の国連難民高等弁務官時代の回顧録。英語オリジナル版の原題が、The Turbulent Decadeとなっているとおり、この時期は大量の難民危機が続出した期間で、著者の困難さが文字からも伝わってくる…

ピンクのチョコレート

林真理子『ピンクのチョコレート』、角川文庫、1997 林真理子の短編集。話はどれも似たようなもので、お金、贅沢、セックス、恋愛と女の子がからむ話が次から次へと続く。雰囲気は昔テレビで見た「バブルと寝た女たち」(家田荘子の本ではなくてそれをドラマ…

最終戦争論 戦争史大観

石原莞爾『最終戦争論 戦争史大観』、中公文庫、1993 石原莞爾(IMEでこの名前が一発変換されたのには驚いた)の代表的な論説を集めた本。講演筆記を元に将来の最終戦争の形態を説いた「最終戦争論」と戦史研究に基づき、戦争形態の変化と現在の日本の国防に…

ブリッジブック 日本の外交

井上寿一『ブリッジブック 日本の外交』、信山社、2005 外交史家の書いた日本外交史あるいは日本外交論についての学生向け教科書。2単位講義に使うことを前提として、15回講義に分けて章立てが組まれている。外交史といっても、年代順に事例を並べていく形式…

井上成美

阿川弘之『井上成美』、新潮社、1986 阿川弘之による井上成美の評伝。以前目を通した宮野澄のものと比べても非常に大部のもの(500ページ以上ある)で、彫琢も細かい。井上の誕生から順を追って出来事を取り上げる形式はとらず、敗戦後の時代と戦前期、戦中…

キミは他人に鼻毛が出てますよと言えるか

北尾トロ『キミは他人に鼻毛が出てますよと言えるか』、幻冬舎文庫、2006 ライターの北尾トロが、「やってみたかったけど、今まで出来なかったことを小さな勇気を出してやってみる」という企画で書いた体験ルポ。おもしろかったのは、「子供と遊びたいと思う…

辺境の惑星

アーシュラ・K・ル・グィン(脇明子訳)『辺境の惑星』、ハヤカワ文庫、1989 これもル・グィンの初期の一冊。オリジナルの刊行は1966年。遠い未来、人類は全世界連盟を結成して広く宇宙に進出しているが、竜座の第三惑星に殖民したひとにぎりの人間はそのま…

アメリカ居すわり一人旅

群ようこ『アメリカ居すわり一人旅』、角川文庫、1991 群ようこの紀行文。著者が二十歳の時のお話なので、だいたい1974年頃のことになる。しかしこの頃で「アメリカにいけば何かきっとおもしろいことがあるはず」という信念で、ろくに英語ができない人がバイ…

無の探求<中国禅>

柳田聖山、梅原猛『無の探求<中国禅> 仏教の思想7』、角川文庫ソフィア、1997 角川の「仏教の思想」シリーズの7巻。中国における禅の変貌を扱う。最初に柳田聖山の論文が来るが、これはある程度実際に禅をやっているか、かなり禅の語録を読んでいないとつい…

国際社会論 アナーキカル・ソサイエティ

ヘドリー・ブル(臼杵英一訳)『国際社会論 アナーキカル・ソサイエティ』、岩波書店、2000 アナーキーである国際システムにも「秩序」があり、そういう意味で「国際社会」が確かに存在すると主張するブルの古典的著作。国際政治学におけるホッブズ的伝統と…

薬指の標本

小川洋子『薬指の標本』、新潮社、1994 小川洋子の中篇。今度映画になったというので題は知っていたが、図書館にたまたまあったので借りてきた。サイダー工場に勤めていて、事故で左の薬指の先端の肉片を切り取られた「わたし」(女)が、「標本室」の事務員…

オルシニア国物語

アーシュラ・K・ル・グィン(峯岸久訳)『オルシニア国物語』、ハヤカワ文庫、1988 ル・グィンのごく初期の作品を含めた連作短編集。東欧のどこかにある架空の国オルシニアでの出来事が、年代はバラバラに展開される。自分として特に気に入ったのは、盲目の…

別人「群ようこ」のできるまで

群ようこ『別人「群ようこ」のできるまで』、文春文庫、1988 群ようこの、自分が作家になるまでの生活を綴ったエッセイというか、記録のようなもの。これがはじめての書き下ろしだったということだ(ちなみにオリジナルは1985年刊行)。時期的には1970年代後…

最新刊

中野翠『最新刊』、文春文庫、1993 著者の時事コラムのうち1988-89年分をまとめたもの。この年は昭和天皇崩御の年で元号が切り替わったから、もう18年前ということになる。感じとしては昔のニュース映画(古すぎか・・・)を引っ張り出して見せられているよう…