医者の本音

中山祐次郎『医者の本音 患者の前で何を考えているか』sbクリエイティブ、2018


著者は、消化器外科医。鹿児島大学卒、1980年生まれ。

この本、医者の職業紹介みたいなものだが、ぜんぜん知らない人でもわかるように、親切に書いてある。しかし、いちばん驚いたのは、著者が医局に入局した経験がないと言っていること。もちろん、そういうこともあるというのは聞いているし、制度上もできることだが、著者の年齢でそういう人は、特に外科では珍しいだろう。天皇の主治医として知られている順天堂大学教授天野篤もそうだという。こっちは、卒業後、すぐにアメリカに渡って経歴を積んだという人なので、ちょっと話は別だが。

その分、いろいろと遠慮しないで書いている。医局の人間関係があると、それに不義理になるような話はなかなか書けないと思うが、一匹狼の人だから書けたのだろう。医局制度や人事のことはまあ、他にも書く人がいるだろうが、恋愛や結婚のことなどはなかなか内部の人でないと書けないということもある。

確かに人のためになり、尊敬され、収入もよい仕事だが、ストレスがきつく、時間もエネルギーも剥ぎ取られるたいへんな職業。しかも、患者は医者に比べれば確実にアホであるケースがほとんどで、そこに対して丁寧に説明ができる人も限られているだろう。

外科以外にも共通することは書かれているが、診療科の違う人、特に内科と女性が同様の本を書いてくれるといいけど。著者の経歴がめずらしいだけにむずかしいだろうが。