2007-05-01から1ヶ月間の記事一覧

増補版 日朝関係の克服

姜尚中『増補版 日朝関係の克服』、集英社新書、2007 増補版というからどのくらい増補されているのかと思ったら、わずか7ページの「増補版 結びにかえて」が追加されているほかは、資料編で年表の書き足し、六カ国協議関係の関連文書の追加(これは他の本の…

ミサイル不拡散

松本太『ミサイル不拡散』、文春新書、2007 ミサイル不拡散問題について、制度と実務の両面から簡潔に解説した本。核不拡散については多くの本があるのに、ミサイル不拡散問題については類書がほとんどないので貴重。著者は外務省でミサイル不拡散の実務に携…

兵隊やくざ大脱走

「兵隊やくざ大脱走」、勝新太郎、田村高廣主演、田中徳三監督、大映、1966 兵隊やくざシリーズ第五作。有田と大宮は国境沿いの別の部隊にもぐりこむが、もちろんこちらも玉砕覚悟。そこに逃げ遅れた慰問団の親子がやってくる。娘役の安田道代がかわいい。で…

兵隊やくざ脱獄

「兵隊やくざ脱獄」、勝新太郎、田村高廣主演、森一生監督、大映、1966 兵隊やくざシリーズ第四作。大宮と有田は逃亡で逮捕され、陸軍刑務所へ。そこで脱走を企てるが、失敗。軍法会議で死刑かと思いきや、法務官が有田の大学の同級生で、死刑は免れ、最前線…

日朝関係の克服

姜尚中『日朝関係の克服』、集英社新書、2003 積読にしておいたこの本を読むことにしたのは、最近第二版が出て、そちらを購入したので、第二版を読む前にこちらも読んでおくことにしたため。しかし、この本の内容はひどい。北朝鮮本の中でも、単に北朝鮮に肩…

富士へ

FMシアター「富士へ」、渡辺いっけい 高橋理恵子 中島陽典ほか出演、小野田俊樹作、真銅健嗣演出、2007/5/26 妻に逃げられた主人公が障害者の施設で働いている女と出会い、スケベ心が手伝ってその女が担当している知的障害者と三人で富士登山に行く、という…

キノの旅

時雨沢恵一『キノの旅』、電撃文庫、2000 これはひょんなことから読むことになった。というか落し物になっていたのをたまたま拾ったので、届けるまでの間に読んで見ることにした、ということ。タイトルを以前きいたことがあるような、という程度で全然予備知…

「世界」とはいやなものである

関川夏央『「世界」とはいやなものである』、集英社文庫、2006 文庫化された元本は、2003年刊行。しかし内容は1980年代末から2003年までの東アジアについての雑多な文章を集めたもの。香港から広州、内モンゴル、ロシア極東部、それから関川のホームグラウン…

テロ後

藤原帰一(編)『テロ後』、岩波新書、2002 時事ネタについての本は鮮度が問題なので、いまさらこの本を読むのはどうかとも思うが、執筆者の評価のためには、あえて古くなってからの文章を読んでみることに意味があるだろう。12編の文章からなっているので、…

D.T.

みうらじゅん、伊集院光『D.T.』メディアファクトリー、2002 みうらじゅんと伊集院光の「童友」コンビが、「童貞」について語るという本。当然二人とももう童貞じゃないのだが、あえて肉体としての童貞はなくしても、精神としての童貞を大事にする、というの…

太陽通り

「太陽通り」、進藤一宏 左時枝主演、小林武演出、NHKFMシアター、07/5/19 シリーズ「ドイツの現代文学」の一作。またナチスもの?と思ったら違った。よかった。東西分断当時の東ベルリンの話。主人公は高校生で、東西ベルリンを分断している通りに面する東…

弄ばれるナショナリズム

田島英一『弄ばれるナショナリズム』、朝日新書、2007 中国におけるナショナリズムの分析をナショナリズムの標準的な理論をもとにして行う本。はじめのうちは標準的だがありきたりの議論をしているのかなと思ったが、読み通してみて、現在の中国の過激なナシ…

酔いどれ天使

「酔いどれ天使」、志村喬、三船敏郎主演、黒澤明監督、東宝、1948 これを今頃初めて見るというのもどうかと思うが、やはり見ておいてよかった。三船敏郎はデビュー作がこれというから、ほんとうにすごい。はじめは野獣のようで、次は人間のようで、終わりは…

日本はどう報じられているか

石澤靖治編『日本はどう報じられているか』、新潮新書、2004 アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、アラブ諸国、中国、韓国での日本報道(当然ながら、ほとんどは新聞についてのもの)を簡単にまとめた本。書店の目立つところにおいてあったので奥付を確認…

ナショナリズムと戦後民主主義 最後の対話

福田和也、大塚英志『ナショナリズムと戦後民主主義 最後の対話』、PHP研究所、2002 表題の通りのネタについての福田と大塚の対談本。しかしくだらない。読むんじゃなかった。特に大塚英志は、歴史についてぜんぜん知らないとか言いながら、よく戦後民主主義…

美しい国へ

安倍晋三『美しい国へ』、文春新書、2006 もともと読むつもりのない本だったのだが、いろいろな都合があって、読むことになってしまった。章立ての順番は、家族と政治的経歴、拉致問題と靖国問題、ナショナリズムと天皇、日米同盟と自衛隊の海外派遣、日中関…

きらきらひかる

「きらきらひかる」、薬師丸ひろ子、豊川悦司、筒井道隆主演、松岡錠司監督、フジテレビ、1992 江國香織の原作は未読。ゲイの男と情緒不安定の女が事情を了解済みで結婚し、男の恋人を交えてしばらくうまくやっていくが、夫が妻に別に恋人をもたせようとした…

安倍晋三の力量

塩田潮『安倍晋三の力量』、平凡社新書、2006 安倍晋三が首相就任までの軌跡とその後の課題を簡潔にまとめた本。『論座』の2006年前半の連載をもとに加筆してある。岸信介、安倍晋太郎についても、それぞれ一章をさいている。著者は政治ジャーナリストとして…

ザ・ペニンシュラ・クエスチョン

船橋洋一『ザ・ペニンシュラ・クエスチョン』、朝日新聞社、2006 長く積読状態になっていて、ようやく読めた。世評に違わぬ力作で、02年10月のケリー訪朝以来の第二次北朝鮮核危機を詳細かつ立体的に再現している。はじめのほうの章で、日本、アメリカ、ロシ…

ときめきに死す

「ときめきに死す」、沢田研二、杉浦直樹主演、森田芳光監督、1984 沢田研二がまだかっこよかった頃に寡黙な暗殺者を演じた映画。ストーリーは説明めいたことは一切抜きで進むので、非常にわかりにくい。しかし静かな画面と音楽、スタイリッシュな演出、何よ…

アイデン&ティティ24歳/27歳

みうらじゅん『アイデン&ティティ24歳/27歳』、角川文庫、1997 「アイデン&ティティ」の初出は1992年ということなので、バンドブームが終わったころか。自分はロックは聴かないので、みうらじゅんがロックにかけている思い入れはたぶんよく理解できていな…

日本軍のインテリジェンス

小谷賢『日本軍のインテリジェンス』、講談社、2007 第二次世界大戦敗北までの日本軍(を中心とする日本)のインテリジェンス活動を全体的に概観、評価した本。このテーマでは当事者の回顧録を中心として多くの本が書かれているが、この本はそれらの知見を統…

「北」の迷宮

ジェームズ・チャーチ(小林浩子訳)『「北」の迷宮』、早川書房、2007 北朝鮮を舞台にしたミステリー小説。原題は「高麗ホテルの死体」。主人公は北朝鮮の人民保安省の捜査官で、通過する車の撮影を命じられたことにはじまり、省の上司、対外情報調査部の男…

ラストキング・オブ・スコットランド

「ラストキング・オブ・スコットランド」、フォレスト・ウィテカー、ジェームズ・マカヴォイ主演、ケヴィン・マクドナルド監督、アメリカ、2006 医学部をでたばかりのギャリガンが医療奉仕のためにウガンダに出かけ、ひょんなことからアミン大統領の側近とな…

世界の[下半身]経済が儲かる理由

門倉貴史『世界の[下半身]経済が儲かる理由』、アスペクト、2007 セックス産業に焦点をしぼって、日本および外国での産業規模と業態を概観した本。セックス産業は、「業態」は広告その他でわかっても、「産業規模」については信頼できる統計が発表されている…

核武装論

西部邁『核武装論』、講談社現代新書、2007 西部邁が日本の核武装について正面から議論する本。となればおもしろくないわけがない。北朝鮮の核開発このかた、日本で議論された「核武装論」のほとんどが箸にも棒にもかからないものであり、他方、ほとんど思考…

欧州左翼の現在

星乃治彦『欧州左翼の現在』、日本図書刊行会、2002 この本でいう「欧州左翼」は、社民主義勢力を含まない、共産党とその後継政党を指す。副題の「欧州統合と「グローバル化」の中のポスト・コミュニズム」のとおり、ドイツを中心としてはいるが、一応ヨーロ…

靖国史観

小島毅『靖国史観』、ちくま新書、2007 靖国神社のよって立つ価値観を水戸学にさかのぼって明らかにし、その「天皇のための英霊」思想の起源を論じる本。著者は宋学の研究者なので、儒教思想の日本における受容史についてはいろんな観点から突っ込んだ叙述を…

未完の明治維新

坂野潤治『未完の明治維新』、ちくま新書、2007 維新史を新しい観点から見直す本。「富国」「強兵」「議会」「立憲」がそれぞれ異なる政治課題であって、その主張者たち、大久保、西郷、板垣、木戸らがどういう対立と連携の関係にあったか、それがどのように…

東京タワー オカンとボクと、時々、オトン

「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」、オダギリジョー、樹木希林主演、松岡錠司監督、「東京タワー o.b.t.o.」製作委員会、2007 原作は未読。松尾スズキの脚本だということもあって見に行った。役者は、オダギリジョー、樹木希林ほかきちんとやって…