大東亜戦争 2

大東亜戦争」2、大島渚監督、1968


大島渚のドキュメンタリー「大東亜戦争」の後編。最初に出てくるタイトルは、「岸信介 筆」でかなり笑った。大島渚のセンスは大したもの。

アッツ島玉砕、ビルマ独立宣言、日タイ条約、フィリピン独立宣言、大東亜宣言。ここは東條首相の大演説あり。でも基本は軍人だから、演説はあまりうまくない。棒読みだ。

出陣学徒壮行会は雨上がりらしく、神宮外苑は泥だらけ。もちろん学徒はかまわず行進してる。スタンドも、グランドも満員の盛況だ。君が代がかかって宮城遥拝。学徒は捧げ銃。また東條首相の演説。ここのナレーションは、元フィルム撮影時のオリジナルだ。学生代表の答辞のあと、海ゆかば斉唱。

インパール作戦。ここのフィルムは一部は日本側撮影だが、元気に行軍しているだけの日本側フィルムに比べて、イギリス側撮影のフィルムは大砲をバカスカ撃っているし、日本兵の死体がゴロゴロしている。あーあ。

勤労挺身隊の「戦力増強結集大会」。女子青年団員代表の演説。こっちは神宮に比べてショボイ。女の子も神宮の方が可愛かった。

疎開。自動車もあるが、ほとんど大八車。大した荷物は運べないのだ。

「決戦農場」では、なんでもかんでも畑にして、かぼちゃでも作ってやれということになっている。かぼちゃ作りをしているのは、小学生。

サイパン島の戦いは、アメリカ側撮影のフィルム。バンザイクリフかた飛び降りているのは女性ばかり。米軍は戦車だらけ。サイパン島玉砕の様子を小学生に伝える校長先生の演説も映っている。

東條内閣総辞職と、小磯内閣成立。

フィリピンの戦いでは、山下奉文が飛行機から降りてくる場面が映っている。山下大将の演説もあり。こっちは東條首相以上に棒読み。

日比谷の国民総決起大会。これは小磯首相が演説。東條首相より演説はうまい。

神風特別攻撃隊の出撃も登場。司令官と神風隊乗員の水杯の場面がある。当然流れているのは海ゆかば

マリアナ諸島からは、B-29がどんどん離陸。爆弾を落としまくっている。昼間爆撃。それもあまり高空ではない。一方、日本側フィルムは小学生が畑を耕したり、空襲後の瓦礫の後片付け。

硫黄島の戦いは、当然アメリカ側のフィルムばかり。摺鉢山に星条旗を立てる場面も映っている。砲撃は雨あられで、すごい勢い。

学童疎開では、小学校低学年の子供がお寺で昼寝。水泳とか、掃除とか、子供も忙しい。疎開できた子供はまだまし。

沖縄戦。これもアメリカ側フィルム。これもロケット弾が雨あられ

沖縄に上陸されて、小磯内閣総辞職鈴木貫太郎内閣。この後は、特攻隊出撃だらけ。これも海ゆかばがガンガン流れている。日本側とアメリカ側の両方のフィルムがある。フィルムのバックには、ひたすら、特攻隊の数を数えている戸浦六宏のナレーションと海ゆかば。これは見ていると鬱になりそう。

ポツダム会談は、連合側の三巨頭が映った後、広島、長崎の原爆投下。ソ連参戦が続く。

フィナーレは8月15日。玉音放送を拝聴する人々。立っているのは焼け野原だ。突っ伏して泣いている人も、黙って聞いている人もある。ミズーリ艦上での降伏調印式も映り、バックにはただ玉音放送が流れる。連行される戦犯容疑者や、鉄道や帰国船で帰国する人々の洌。

最後は音声なしで、大東亜戦争の死者、251万7406名という数字だけが画面に出る。この当時はこういう数字になっていたのだ。


やっぱり大島渚はうまい。映画監督だからうまくて当たり前というレベルではない。新規撮影は基本的になし、ナレーションも余計なことは言わない。それでもこれだけ強力なメッセージになっているのだ。見ているとひたすら憂鬱。リアルタイムで見ていた人もたぶん同じだったろう。