本居宣長

田中康二『本居宣長中公新書、2014


これは宣長研究者による本居宣長の伝記。宣長の生涯を、著作とともに追いかけている。

宣長の思想を一言で取り出すというようなことは不遜なことだと言っていて、宣長の著作をひとつひとつ検討して、その主張や方法を説明していくというスタイルの本。また宣長の著作がそれぞれ引用され、現代語訳がついている。

宣長の学問は、古代日本語研究と、古代日本思想研究の両方に及んでいるし、とにかく著作の量が多く、プロの学者以外でこの両方に取り付ける人はほとんどいないだろう。それをまめにしているのがこの本。この本一冊で宣長のだいたいのことがわかるというよりは、宣長の深さと幅広さ、学問に対する姿勢がわかるというようなもの。

安易に宣長をわかったようなつもりになるなというのが、著者が強調しているところ。「もののあはれ」の解説だけで済まされては困るということ。この本は入り口の入り口でしかない。学者らしい態度といえば、そのとおり。