手榴弾・迫撃砲

イアン・フォッグ(関口幸男訳)『手榴弾迫撃砲 塹壕戦の必殺兵器』、サンケイ新聞社出版局、1974


サンケイの赤本の第60巻。著者は、このシリーズの「大砲撃戦」と同じ人で、1926年生まれ、第二次大戦と朝鮮戦争に従軍し、その後イギリス陸軍の学校教官だった人。

タイトル通り、手榴弾、小銃擲弾、迫撃砲、携帯用対戦車兵器という、歩兵用の軽火器を扱い、この本と『大砲撃戦』、『拳銃・小銃・機関銃』を併せて、第二次大戦で使われた火器がおよそわかるというもの。

これらの兵器について、その黎明から、各国ごとに使われた兵器の種類、性能、実際の運用について、わかりやすく書かれている。

榴弾は擲弾として広く使われたが、19世紀には時代遅れのものとしてほぼ消滅。しかし、日露戦争塹壕戦向けの兵器として復活し、第一次大戦で大々的に使われた。

迫撃砲も中世以来の古い歴史のある兵器だが、近代的な迫撃砲が運用されたのは第一次大戦以後。その後は、砲兵によるややこしい運用が必要ない、歩兵用兵器として、両者とも広く使われた。

複雑な説明抜きに、素人向けにわかりやすく書かれたこの種の本としては貴重。手榴弾迫撃砲、とも、これに特化した本は、21世紀になるまで、日本語では出版されていないのだ。第二次大戦参加国のほとんどをカバーしている点でもありがたい。銃器はファンが多いからそれなりに本が出ているが、個人が持てない火砲や軽火器は、ニッチな分野なので資料が少ない。

航空機、戦車、艦船だとこういうことはないので、やはり地味な分野の本はなかなか出ないらしい。