空挺作戦

チャールズ・マクドナルド、板井文也(訳)『空挺作戦 縦横無尽の奇襲部隊』、サンケイ新聞社出版局、1972


サンケイの赤本の、"Airborne"の巻。著者は、米陸軍史料編纂委員副主任という人。

各国軍、特に米英独3カ国の空挺部隊と、実際の作戦について書かれた本。他国、ソ連、日本、フランス、イタリア等の空挺部隊はちょっと触れるだけで、ほぼ無視。まあ、3カ国以外の部隊は大した規模の作戦はしていないので、しかたがない。

取り上げられている作戦は、「マーケット・ガーデン」作戦、クレタ島作戦、シチリア島作戦、「オーバーロード」作戦、ビルマ、フィリピン作戦など。

オーバーロード」作戦以外は、あまり大きな戦果がなかったか、損害が非常に大きく、割にあわない結果になっている。

理由は、敵の防衛線上への降下、降下後の部隊集合が困難、意図した地点に降下すること自体が困難などなど。うまく行けば大戦果をあげられそうであっても、ギャンブル要素が高いのだ。

しかも、大量の輸送機とグライダー、空中からの援護が必要な上、空挺部隊の養成には手間と時間が必要。なのに、現場では高価な空挺部隊はただの歩兵として使われることが多く、部隊建設に見合った効果はそれほど上がらない。

著者は、空挺部隊は「ぜいたく品」と断定している。特殊な訓練が必要で、大きな空軍を持っていないと使えず、大規模な使用は大バクチということなら、それも当然か。

原著は1970年代初めに書かれていて、ベトナム戦争でのヘリコプターの活用の結果が十分分析されていない(巻末に少しだけ触れられているだけ)ので、ヘリコプターの使用については書かれておらず、パラシュートとグライダー利用の空挺部隊だけ。これは時期的な制約の結果だから仕方がない。