大軍都・東京を歩く

黒田涼『大軍都・東京を歩く』、朝日新書、2014


これはかなり手間をかけて作られた本。東京にある、軍関係の遺跡を訪ねて回るという企画。

この本を手にした人が、実際に歩いて回ることを前提としているので、地域ごと(23区内)に分けられ、歩くためのコースが示されている。現在、防衛省自衛隊の施設として残っているものは数えるほどしかなく、小さな碑くらいしか残されていないことが多いので、見つけるのはかなりたいへん。

もちろん著者は、実際に歩いてみて、現状を把握しているのだが(現状や、過去の写真多数が載っている)、昔の地図や記録がなければどこに何があったかはわからないので、資料をよく調べていなければできない本。

部隊の衛戍地だけでなく、官衙、工場の敷地、練兵場、飛行場(光が丘には飛行場があった)など、東京のいたるところが軍関係の施設で埋まっていたようなもの。いまは跡形もないものがほとんどで、一部が残っているものでも、市ヶ谷の陸軍参謀本部や六本木の陸軍歩兵第三連隊など、ほんの一部だけを切り取って保存しているくらい。

歴史的建造物だから、もっと配慮があってもいいのに、日本は近代を歴史とは思っていないのね。

しかしこの本は貴重品。これがあるだけで、東京の街歩きが数倍楽しくなる。