在日朝鮮人

水野直樹、文京洙『在日朝鮮人 歴史と現在』、岩波新書、2015


韓国併合以前から、現在までの在日朝鮮人の歴史をまとめた本。朝鮮人労働者が日本に初めて渡ったのは、1897年からである。1920年代までが第1章、敗戦までが第2章、1960年代までが第3章、1980年代までが第4章、その後が終章。

日本統治時代、分断後の韓国、北朝鮮所属を一括して在日朝鮮人として扱っていて、節目になる事件と、主要な団体、人名が押さえられており、在日朝鮮人社会の通史として役に立つ。

特に総連と民団の関係、在日朝鮮人の民族運動、文学者らをわかりやすくまとめているので、そこは便利。巻末の文献一覧もちゃんとまとまっている。

難を言えば、著者が著者なので、抑圧的な日本社会に抵抗する在日朝鮮人というスタンスで内容が一貫していること。しかし、このテーマである以上は、それはある程度避けられない。主張部分を横においても、有用な本であることは確か。特に、在日朝鮮人といっても、いろいろな立場があるので、個人の書き残したものを広く読む必要があることを痛感する。