1949年の大東亜共栄圏

有馬哲夫『1949年の大東亜共栄圏 自主防衛への終わらざる戦い』、新潮新書、2014


有馬哲夫の本がまた出た。あいかわらず、びっくりするような新事実が満載で、口が開いたまま。

この本の主題は、『大本営参謀は戦後何と戦ったのか』の続きで、日本再軍備をめぐる旧軍人、占領軍司令部、保守政治家らの暗闘に、山西軍閥や台湾に逃げた後の国民党が絡んでくるドラマ。

いろいろと複雑なのだが、旧軍人の一部は、「東亜連盟」の復活を目論んで、山西省で閻錫山と手を組んで戦い続けてきた。これが収拾できなくなって、救出のために台湾の国民党と結ぶプランが出てくる。

このプランは、日本に義勇軍を編成し、これを将来の日本軍再建の基盤として、米英、ソ連と対抗する第三勢力としてつくり上げるという宇垣一成の考えと重なる。

しかし、朝鮮戦争警察予備隊設置を契機に、宇垣一成を中心とした旧軍人グループは分裂、さらにマッカーサー解任と、ウィロビーの帰国によって、旧軍人グループは力を失い、一部が自衛隊に潜り込んだだけで、「再軍備を基礎とした、第三勢力としての日本再建」計画は、闇に消えてしまう、というストーリー。

吉田茂の軍事顧問だった辰巳栄一が、服部卓四郎と対立していたという図式は間違いで、辰巳栄一と服部卓四郎はちゃんとつながっていたこと、児玉誉士夫再軍備を基礎とする日本再建構想を明確に持っていて鳩山一郎には後で裏切られていたことなど、わかっていなかったことがいろいろ書かれている。

旧軍人が台湾独立運動に関わって、沖縄経由で台湾との密貿易にからんでいたり、金門島攻防戦に「海上突撃総隊」なる日本人義勇軍がからんでいたり、世の中、何が起こっているのかわからないもの。

しかしなお不明なのは、占領軍総司令部と日本の旧軍人、政治家との関係に、本国政府の意向がどこまで関わっていたかということ。マッカーサーとリッジウェイでは関与の仕方が全く違う。朝鮮戦争でのマッカーサー解任がなければ、日本再軍備もかなり違った姿になっていたはず。

文書公開が続く限り、この本の続編は出るはずなので、今後もたのしみ。といっても、アメリカにとって現在都合の悪い事実は公開対象にはならないことは、著者も明言しているので、この微妙さのかげんがもどかしい。