1971年の悪霊

堀井憲一郎『1971年の悪霊』角川新書、2019


堀井憲一郎、1958年生まれだった。この本は、1971年の雰囲気(著者はこの年には中学生)を事件ベースで切り取ったというもの。著者が高校生、大学生の時には「残り香」みたいなものがあっただけだが、そのくらいの世代なら余香はじゅうぶん感じられたはず。

取り上げられていることは、岡林信康高橋和巳ウッドストック小さな恋のメロディローリング・ストーンズパリ五月革命文化大革命。これで、1968年から少しだけあとの時代に左翼思想がなぜはやったかを、断片的に書いている。

この試みはあたりだと思う。「悪霊」と連合赤軍事件で締めているのもいい。本当にお祭り騒ぎと雰囲気で人間行動がここまで決まっていたのだ。いま70歳代(リアルでこの事件を体験した人たち)の人は、これを雰囲気でしか感じていないから、ここに書かれていることはある意味新鮮に聞こえるかもしれない。