戦乱と民衆

磯田道史、倉本一宏、F.クレインス、呉座勇一『戦乱と民衆』講談社現代新書、2018


この前に出た日本史と戦争の本。古代(白村江の戦い)、中世(応仁の乱)、近世(大坂の陣)、近世ー近代(禁門の変)の4つの原稿があって、そのあとにシンポジウムの記録が2つついている。

前の4本もなかなかおもしろく、特に白村江の戦いについてはぜんぜん知らなかったので、非常に勉強になった。白村江の戦いで日本は大敗しているのだが、ほとんど兵は日本に帰ってこられなかった。当時としては破格の大軍(3万以上?)を送っているので、日本全体に対して計り知れない打撃があったはず。しかも、日本軍はただ農民を徴集して連れて行っただけで、服もろくになく、槍といっても、金属の穂先がないただの木の棒。訓練ゼロ。これでは負けてあたりまえ。

そして応仁の乱だが、これは徳政一揆と地続きのもの。しかも徳政一揆は、高利の土倉に対する反抗というようなものではなく、ただの略奪行為。これを再び始めたのが応仁の乱足軽だったというおはなし。

まったく知らなかったことが多数書いてあって、読んで良かった。しかし一番面白いのは、最後に出てくるシンポジウムでの井上章一の発言。戦争中の京都の建物疎開は、御池通堀川通五条通だけで行われており、祇園祭の鉾町を囲むように実施された。つまり、あれは鉾町を守るためだったという話。やはりこの人はいろいろとすごい。