#日本史

日本人の給与明細

山口博『日本人の給与明細 古典で読み解く物価事情』角川ソフィア文庫、2015 『古典でたどる日本サラリーマン事情 現代に換算して見る日本人の生活史』PHP、1988の文庫化。非常におもしろい。 政府から「給与」を与えられていた「役人」がいたのは、明治以前…

日本史のまめまめしい知識 第1巻

日本史史料研究会編『日本史のまめまめしい知識』第1巻、岩田書院、2016 新書サイズの日本史の本。しかし、270ページくらいの本なのに、33編の論文がある。正確には、論文というには少し短いサイズで、注も厳密ではなく、各編の終わりに文献リストがあるのみ…

日本神判史

清水克行『日本神判史 盟神探湯・湯起請・鉄火起請』中公新書、2010 神判裁判の歴史についての本。盟神探湯のことは昔読んだが、この話は8世紀に書かれた『日本書紀』に出ている。ところが、この後、室町時代まで、神判裁判についての歴史がはっきりしない。…

耳鼻削ぎの日本史

清水克行『耳鼻削ぎの日本史』洋泉社、2015 「耳鼻削ぎ」の歴史を書いた本。非常におもしろかった。 まず「耳塚、鼻塚」についての柳田國男、南方熊楠論争が紹介され、「耳鼻削ぎ」についての論争が昔からあったことがわかる。 では、耳鼻削ぎがいつから、ど…

大本営発表

辻田真佐憲『大本営発表 改竄・隠蔽・捏造の太平洋戦争』幻冬舎新書、2016 精力的に著作を発表している著者による、太平洋戦争における「大本営発表」の歴史本。大本営発表は、1937年から、1945年まで行われていて、日中戦争時の当初は地味で、そんなに外し…

昭和16年夏の敗戦

猪瀬直樹『昭和16年夏の敗戦』中公文庫、2010 すっかり世評の高い本になったが、読んでみるとやはりおもしろい。この版は中公文庫なので、2010年になっているが、1983年に世界文化社から出て、その後1986年に文春文庫に入った。そのまま改訂もしていないのに…

史録日本再軍備

秦郁彦『史録日本再軍備』文藝春秋、1977 秦郁彦のけっこう前に出た、憲法9条、日本再軍備の本。かなりおもしろかった。憲法9条を、マッカーサーと幣原のどちらが言い出したのかについては、完全な決め手はないが、やはりマッカーサーから言い出して幣原に受…

流れをつかむ日本の歴史

山本博文『流れをつかむ日本の歴史』KADOKAWA、2016 山本博文の「日本史全部の概説」本。あまり細かいことに振り回されず、大づかみに全体のことをわかることが大事という著者の考えには同意。実際わかりやすい。高校の日本史教科書みたいなものを読むよりは…

忍者の歴史

山田雄司『忍者の歴史』KADOKAWA、2016 タイトルの通り、「忍者の歴史」をできるだけ、「忍術書」の内容に即して書いた本。 忍者が少なくとも中世以来はいたこと、主な任務は諜報活動だったということはわかる。「孫子」にいう「生間」。しかし、それをどう…

華族

小田部雄次『華族 近代日本貴族の虚像と実像』中公新書、2006 華族を紹介する本。華族の成立、明治期、明治~大正期、大正~昭和期、敗戦後に分けて、華族制度と、華族についてのいろいろなエピソードが書かれている。 まず、「華族」の名前も、区分の方法も…

歴史をつかむ技法

山本博文『歴史をつかむ技法』新潮新書、2014 これはタイトル通り、歴史を全体的に把握することの重要さ、歴史学の言葉の使い方、歴史学と他の方法(歴史小説)の見方の違い、などに触れた「歴史学の考え方」を紹介する本。同じ著者の『格差と序列の日本史』…

格差と序列の日本史

山本博文『格差と序列の日本史』新潮新書、2016 タイトルはこうなっているが、実質的には日本史上の「国家機構と官僚制度の概説」。 律令制とその後の変遷が中心だが、江戸時代のところが一番詳しく、読みがいがある。著者の専門だからあたりまえ。この部分…

古代史の基礎知識

吉村武彦(編著)『古代史の基礎知識』角川選書、2015 縄文から、摂関期までの日本史の概説書。編著者の吉村と、佐々木憲一、川尻秋生の3人の共著。縄文から摂関期までといえば、1000年どころじゃないのだが、よく3人で書けたもの。電子版で買ったが、底本は…

戦国武将の明暗

本郷和人『戦国武将の明暗』新潮新書、2015 本郷和人の戦国本。エピソードの落ち穂拾いみたいな形式だが、史料の読み解きに沿って話を展開するという原則は踏み外していない。しかもおもしろい。 第1章から、第3章までが「関ヶ原考」になっている。ここでは…

戦いの城 特別編 山城へ行こう

「戦いの城 特別編 山城へ行こう」 ヒストリーチャンネルの番組。この回が中世城郭だったので、見た。これはおもしろい。 八王子城を実際に歩いてみましょうという企画。出演者は、戦国時代好き外人のクリス・グレン、AKBの田名部生来、城郭研究家の中井均滋…

「城取り」の軍事学

西股総生『「城取り」の軍事学』学研パブリッシング、2013 同じ著者の『戦国の軍隊』がおもしろかったので、こちらも読んでみた。かなりおもしろい。 こちらが城郭研究についてほとんど知らないので、読みどころばかり。城郭史は、中世史の中でも深く研究さ…

戦国の陣形

乃至政彦『戦国の陣形』講談社現代新書、2016 「陣形」に着目して戦国時代までの日本軍事史に一石を投じる本。非常におもしろい。 まず「陣形」というものが実際に定型化されるようになったのは、戦国時代から後。それ以前は、散開した状態が「鶴翼」、密集…

戦国の軍隊

西股総生『戦国の軍隊 現代軍事学から見た戦国大名の軍勢』学研、2015 戦国期の「軍隊」についての考察。動員体制、兵種別編成の有無、鉄砲(鉄炮)の数と用兵、侍、足軽、雑兵、小者、軍夫の別、兵站と略奪、兵農分離の真偽、織豊軍が勝利した理由など、多…

日露戦争史

横手慎二『日露戦争史 20世紀最初の大国間戦争』中公新書、2005 簡単な日露戦争の歴史。それでも2005年ごろまでの日本語、ロシア語、英語の主要な日露戦争史の文献を踏まえて書かれているので、そこまでの部分では内容的に確実。 日露戦争の発端は、日本とロ…

沖縄現代史

櫻澤誠『沖縄現代史 米国統治、本土復帰から「オール沖縄」まで』中公新書、2015 沖縄戦以後の沖縄通史。時期を区切って、それぞれの時期の政治、経済、文化・思想での出来事をまとめているので、大変読みやすい。 特に参考になったのは、本土復帰前の沖縄…

真田昌幸

黒田基樹『真田昌幸 徳川、北条、上杉、羽柴と渡り合い大名にのぼりつめた戦略の全貌』小学館、2015 副題をみると、一般読者向きの真田昌幸の概説書のように見えるが、そうではなく、史料ベースでひたすら事実が述べられるタイプの歴史書。それも、真田昌幸…

「靖国」と「千鳥ヶ淵」を考える

堀内光雄『「靖国」と「千鳥ヶ淵」を考える』祥伝社新書、2013 著者は元衆院議員、自民党総務会長。この本が出た時点では、千鳥ヶ淵戦没者墓苑奉仕会会長。著者の父、堀内一雄が、千鳥ヶ淵戦没者墓苑の設立に尽力した一人だということがあって、この仕事を引…

ちづかマップ 2

衿沢世衣子『ちづかマップ』2、小学館、2013 地理マンガ、『ちづかマップ』、この巻も場所の選定がしぶい。 この2巻は、青梅、王子、麹町、紀州和歌山。 青梅の話は、鏝絵から始まって、漆喰の材料になる石灰石を青梅まで探しに行くというもの。青梅はさすが…

ちづかマップ 1

衿沢世衣子『ちづかマップ』1、小学館、2012 評判のよい作品なので、読んでみた。これは快著。 古地図好きの女子高生「ちづか」と、相方の男子高校生「三四郎」、ちづかの「おじいちゃん」が、古地図を頼りに、昔の風景と現在の情景を訪ね歩くおはなし。 日…

輸送船入門

大内建二『輸送船入門 日英戦時輸送船ロジスティックスの戦い』光人社NF文庫、2003 第二次世界大戦時の、日本商船隊の記録。当然ながら、とにかく悲惨。 商船隊の主力となる高速船も、戦時標準船も、1942年以後はとにかく沈められるだけ。トラック島空襲とフ…

天下統一 ─秀吉から家康へ

黒嶋敏『天下統一 ─秀吉から家康へ』講談社現代新書、2015 豊臣政権から徳川政権初期の、日本外交について考察した本。非常におもしろかった。 秀吉の朝鮮出兵は、直接の理由は「服属しない朝鮮の征伐」だが、明との通交が目的で、明からの「日本国王への冊…

日本本土決戦

藤田昌雄『日本本土決戦 知られざる国民義勇戦闘隊の全貌』潮書房光人社、2015 これはインパクトが強烈な本。国民義勇戦闘隊というのは、本土決戦に備えて編成準備が行われていた急造部隊。後方支援目的の「国民義勇隊」に対して、こちらは戦闘組織。この組…

足利直義

森茂暁『足利直義 兄尊氏との対立と理想国家構想』KADOKAWA、2015 足利直義の評伝。去年出たばかりで、著者はこの時代に関わる練達の専門家なので、内容は濃い。 足利直義の生涯の事績、特に尊氏との両頭政治の内容を押さえた上で、なぜ尊氏と袂を分かって観…

鉄道が変えた社寺参詣

平山昇『鉄道が変えた社寺参詣』、交通新聞社、2012 短い本だが、非常におもしろい。博論ではないようだが、著者はこの「社寺参詣と鉄道」というテーマで研究している人。 趣旨は、「初詣は明治の半ばになってから、鉄道の開通によって始まった習慣ですよ」…

戦前日本の安全保障

川田稔『戦前日本の安全保障』、講談社現代新書、2013 山県有朋、原敬、浜口雄幸、永田鉄山の4人に焦点をあてて、彼らの外交、安全保障構想をまとめた本。なぜこの4人なのか、という疑問はあるが、重要人物であることはたしかなので、読んでいてためになる。…