日本軍はなぜ満洲大油田を発見できなかったのか

岩瀬昇『日本軍はなぜ満洲大油田を発見できなかったのか』文春新書、2016


タイトルはこのとおりだが、実際の内容は、戦前期日本のエネルギー開発を概観した本。内容に沿ったタイトルの方が、もっと読まれると思うが。

戦前日本では、燃料のことを考えていたのは海軍だけ。陸軍はほとんど関心を払っていなかった。機械化されていない軍に必要なのは航空用ガソリンだけだから。

日本は日露戦争の戦利品として南樺太を領有していたが、北樺太の石油についても交渉で部分的な権利を持っていた。しかし交渉の仕方がわかっておらず、結局権利はほとんどタダで売らざるを得なかった。理由は石油開発を知らない人が交渉をしていたため。

満洲の石油開発も、全部自国でやろうとして失敗。開発の経験がないのなら、アメリカその他にたくさんある経験をもった会社と契約してやらせればいいのに、この判断ができなかった。

南方油田はほぼ無傷で手に入れたが、陸海軍の縄張り争いで、輸送その他で失敗していた。連合軍の輸送路攻撃以前に輸送の手順を立てることに失敗していた。人造石油は日本の技術ではできなかった。

石油がなくなったら大変だということはわかっていても、石油を産業としてどのように動かせばいいかということをわかっていない人が上に座っているので、どうにもならない。それでも木戸幸一は、南方石油を奪取しても実際には運べないということくらいはわかっていたのに、それすら東条英機には無視されていた。

技術者はいても、上が技術無視でなんとかなると思っているので、どうにもできない。悲しいわ。今でも事態はあまり違わないかもしれないが。