史論の流行

津田左右吉『史論の流行』


19世紀末の文章だが、津田左右吉が日本歴史学の浅さを嘆いている文章。

史論が流行しているが、歴史を論じるには正確な事実がなければならず、それが史論に欠けているという。史論というのは国史についてのものなのだが、津田左右吉は、読者や社会が歴史に有用性や物語を求めすぎだという。

資料をたくさん集めては、児島高徳楠木正成日蓮を誹謗している、と世人が歴史を攻撃するという。先に忠義の士を顕彰するという目的があるだけで、史実に就くということを閑却している。こんなことだから、日本歴史が浅くなってしまっているという説。

戦前の国史に対する批判的態度は、すでにこの頃にはあったということ。歴史学者以外には、もう知られてすらいない。