足利義満

小川剛生『足利義満中公新書、2012


帯がおもしろそうだった(「将軍の正体見たり」とある)ので、買って読んだが、驚倒した。

義満の有名なエピソード、天皇にとって替わろうとした、日本国王号を明から受けたのは天皇を乗り越えようとしたため、太上天皇の尊号を受けたが臣下が返上した、といったようなことは、すべて間違っているという説。ちゃんと史料と学説の引用の上にできているので、信じざるを得ない。ほんとにそうなのか。

日本史の学説も時間が立てば塗り替えられるというのは、わかっているつもりだったが、こんなに信じていることを「違います」と言われたら、本当に驚く。著者によれば、従来の説が間違っていたのは、学問が足りないための思い込み。そう言われてもしかたがないと納得させられる記述。

右大将の地位、宮廷儀礼の政治的な意味、高位の貴族、武家層における教養の意味、大寺院の権勢など、知らなかったことがたくさん書いてあり、本当におどろいた。

著者は1971年生まれ。まだ40代の人。これだけ学問していて、これだけ書けるのだ。おそろしい。