兵学思想入門

拳骨拓史『兵学思想入門─禁じられた知の封印を解く』ちくま新書、2017


著者は、1976年生まれ。この本は、日本「兵学」(これは江戸時代)の歴史というものなのだが、非常に肩透かし。

だいたい「兵学」といっても、体系などなく、中国の兵法を日本風に味付けして、水で薄めたようなもの。内容はない。

孫子」のような洞察はないし、戦略も戦術も兵站もない。精神論みたいな話ばかり。だいたい戦国時代以前の「兵学」というものがどういうものだったのか、はっきりしない。体系的な戦争の方法論など、日本にはない。

この本、兵学思想といいながら、誰がどういう形で具体的な戦争の方法を示しているか、ちゃんと紹介していないし、もちろん「思想」もない。そんなものは、明治以後に日本陸海軍が創設された後で、「日本にも独自の戦争に対する思考があった」ことにしたかったので、適当に作られた話。

こんなものだったら、最初から孫子か、近代西洋の戦略戦術論だけでいいので、兵学などに価値はない。なんでもかんでも道徳や精神論で片付けようとする、よくない態度。この本の著者も、孫子クラウゼヴィッツは読んでいないのか?この本自体が、労力のムダ。