#世界史

100歳の台湾人革命家・史明 自伝

史明(田中淳構成)『100歳の革命家・史明自伝 理想はいつだって煌めいて、敗北はどこか懐かしい』講談社、2018 著者は1918年台湾生まれ。もう101歳。台湾の大地主の家に生まれ、台北一中を中退して、早稲田高等学院から早稲田の政経を卒業。そこで共産党に…

東洋史上から見たる明治時代の発展

桑原隲蔵『東洋史上から見たる明治時代の発展』 これはまあ、つまらない。大正になってから、桑原隲蔵が明治時代を絶賛した文章。日本は東洋一!というようなもの。当時の人だから当然だが、支那は遅れており、日本こそ支那を教え述ぶるもの、こんな時代はい…

蒲壽庚の事績

桑原隲蔵『蒲壽庚の事績』 このタイトルになっている人は、宋代から元代、だいたい13世紀に生きていたおそらくはアラブ系の商人。宋の広州、泉州、杭州あたりは大きな貿易港となっていたが、そこに住んで南方、インド、アラブとの交易をしていたのはアラブ人…

支那人の文弱と保守

桑原隲蔵『支那人の文弱と保守』 初出は大正5年(1915)。支那人は、文弱かつ保守だというのだが、文弱は多分に保守によるところが大きいように思われるので、文弱も多くは保守から出ているものだろう。 古今の書籍をひいて、戦争する気がまじめでなく、こと…

老子化胡経

桑原隲蔵『老子化胡経』 老子化胡経、つまり道教側が、「老子が釈迦を教化した」と主張している本の来歴についての論文。道教仏教の論争は、すでに後漢末期にあり、老子が釈迦を教化したという説もそのころにあった。 老子化胡経は、晋の恵帝の時代、道士の…

紙の歴史

桑原隲蔵『紙の歴史』 紙の歴史だが、後漢代に蔡倫が発明したことになっているのは、蔡倫が紙の新しい原料を発見したということで、製紙法自体は前漢代に存在した。「説文解字」に「紙」の項があるが、これは今でいう紙のことではない。「説文解字」は蔡倫と…

支那の宦官

桑原隲蔵『支那の宦官』 これは宦官の話。こっちは弁髪どころではなく、周代からあった習慣。中国だけでなく、古代オリエントの王国にもあったし、ローマ、ギリシャ、イスラム教帝国にもあった。逆にこれがないのは、ヨーロッパと日本だけ。朝鮮や越南にもあ…

支那人辮髪の歴史

桑原隲蔵『支那人辮髪の歴史』 これは弁髪の歴史について。清朝から始まったのかと思っていたら、そうではなく、金の時代(13世紀)から始まっていたもの。もちろん明朝では弁髪はなかったが、それを除くと、中国の弁髪は800年くらいは続いていた。 明朝では…

東洋文化、東洋思想、東洋史

津田左右吉『東洋文化、東洋思想、東洋史』 津田左右吉の「東洋」についての文章。卓論。 東洋というのは西洋に対して言う言葉だが、もともと中国では、東洋というのは太平洋で、西洋というのは、南シナ海からインドのこと。もちろん中国は中心だから東洋に…

支那史上の偉人

桑原隲蔵『支那史上の偉人(孔子と孔明)』 講演録で、6回シリーズで支那史上の偉人を取り上げる予定で、孔子、始皇帝、張騫、孔明を扱うはずだったのが、始皇帝と張騫は他の文章で取り上げたのでやめた、孔子と孔明だけで3回ずつ話します、ということになっ…

支那猥談

桑原隲蔵『支那猥談』 この文章、猥談と書いてあるのでなんだろうと思ったら、今の意味での猥談ではぜんぜんない。中国と中国人の欠点を指摘するというようなもの。 1926年の文章なので、日本と中国の間が本格的には悪くなってはいないが、あまりよい状態で…

秦始皇帝

桑原隲蔵『秦始皇帝』 桑原隲蔵の、始皇帝についての小文。始皇帝が悪ばかり強調されるのは、漢代のためにする議論と中国人の道徳主義の影響だと断じていて、これはいまでは普通の議論だが、当時は(1927年)斬新だったはず。 勉強になったのは、焚書坑儒の…

陳独秀

長堀祐造『陳独秀 反骨の志士、近代中国の先導者』山川出版社、2015 中国共産党の初期の指導者、陳独秀の簡潔な伝記。この人も名前くらいしか知らなかった。 新文化運動、五四運動の指導者。当時はまだ共産主義者ではなかった。五四運動が敗北して、ソ連の指…

支那人間における食人肉の風習

桑原隲蔵『支那人間における食人肉の風習』 著者は、中国文学者。内藤湖南と並ぶ東洋史学者。宮崎市定の師匠。 この本、タイトル通り中国社会における食人風習の話だが、文献の出典が非常に広い。中国の史書にあたっていることは当然として、フランス語、ド…

「情」の文化史

張競『「情」の文化史 中国人のメンタリティー』KADOKAWA、2014 中国の文献で「情」がどういう意味で使われていたかという本。情というと、日本語だと男女、親子、友人くらいか。この本を読むと、その程度ならまあ、中国も日本に近いが、その情の内容となる…

ケマル・アタテュルク

設楽國廣『ケマル・アタテュルク トルコ国民の父』山川出版社、2016 山川の世界史リブレット、ケマル・アタテュルクの本。この時期のトルコ史をぜんぜん知らなかったので、非常に勉強になった。 もともとは軍人だが、この人の真価が発揮されたのは、むしろ第…

ナセル

池田美佐子『ナセル』山川出版社、2016 山川のリブレット、これは「ナセル」。近代エジプト史はぜんぜんわかっていなかったので、取り付くのに便利な本。 ナセルは基本的に軍人で、政治家にはあとから流れでなったという人物だが、リーダーシップやカリスマ…

ナポレオン

上垣豊『ナポレオン 英雄か独裁者か』山川出版社、2013 山川の世界史リブレットのナポレオン編。おもしろかった。 英雄か独裁者か、というタイトルになっているが、そのとおりで、どっちとも言えるのがナポレオン。戦争もできて、内政もできたのだし、革命期…

ユリアヌス

南川高志『ユリアヌス 逸脱のローマ皇帝』山川出版社、2015 辻邦生の『背教者ユリアヌス』でしか知らなかったこの人、実はあの小説のような人ではなかったというのが、この本を読んでわかった。 一般的には、「キリスト教側からの悪口」→「反対側からの見直…

中国の大盗賊 完全版

高島俊男『中国の大盗賊 完全版』講談社現代新書、2004 これは名著。高島俊男は碩学として知られている人だが、やはりすごい。 中国の皇帝家を新しく興した人は、みな盗賊。それらが盗賊である理由を、いちいち書いたというもの。陳勝、劉邦、朱元璋、李自成…

ロベスピエール

松浦義弘『ロベスピエール 世論を支配した革命家』山川出版社、2018 世界史リブレットに入っているロベスピエールの本。読んでみると、ロベスピエールはやっぱりキチガイ。 頭はよく、演説ができた。演説は最初から、議会を説得するためではなく、議会外の世…

チャーチル

木畑洋一『チャーチル イギリス帝国と歩んだ男』山川出版社、2016 山川の世界史リブレットに入っているチャーチル伝。チャーチルの帝国主義者としての側面が強調されている。 チャーチルは、1874年生まれ、1965年没なので90歳。時代を考えても長命な人。チャ…

1918年最強ドイツ軍はなぜ敗れたのか

飯倉章『1918年最強ドイツ軍はなぜ敗れたのか ドイツ・システムの強さと脆さ』文春新書、2017 第一次世界大戦を「ドイツ側から」見た本。そもそも第一次世界大戦の戦史自体を十分に理解していなかったのだが、この本でかなり頭に入った。 しかしこの本の価値…

蒙求

(今鷹眞訳)『蒙求』角川ソフィア文庫、2010 ビギナーズ・クラシックスの一冊なので、抄訳。このシリーズ、古典の抄訳で、内容には粗密があるが、簡単に中国と日本の古典に取り付けるので便利。そんなに長くないのでサクサク読める。興味が持てれば、全訳を…

史記の風景

宮城谷昌光『史記の風景』新潮文庫、1997 宮城谷昌光の史記エッセイ。エッセイといっても、史記の文章をそのまま紹介するのではない(それだと翻訳)ので、史記の記述に、他の史書や白川静の漢字研究を参照して、いろいろな解釈をほどこしている。 著者自身…

アフター・ヒトラー 前・後編

「BS世界のドキュメンタリー」、「アフター・ヒトラー」前後編、NHKBS1、2018.1.1 フランスのテレビ局が制作した、第2次世界大戦直後のヨーロッパについてのドキュメンタリー。 これで一番驚いたのは、戦後の東欧諸国でのドイツ人迫害。迫害というには生温い…

西太后

加藤徹『西太后』中公新書2,012 これはかなり面白かった。西太后を通じて清朝後期の中国史を描いた本。そもそも清朝の歴史について、よく知らなかったので、清朝の宮廷制度や、皇帝の結婚、清朝内部の満人と漢人の関係の部分から色々と勉強になった。 西太后…

レーニン

和田春樹『レーニン 二十世紀共産主義運動の父』山川出版社、2017 山川の「世界史リブレット」の一冊。短い伝記シリーズ。これはけっこう需要があるだろう。この巻もちゃんと和田春樹に書かせているわけだし。 100頁くらいの短い本だが、このページ数で、レ…

フランス現代史 隠された記憶

宮川裕章『フランス現代史 隠された記憶』ちくま新書、2017 著者は、毎日新聞記者。この本は、フランスの「戦後史」。ネタは、第一次大戦、第二次大戦、アルジェリア戦争。 第一次大戦は、「不発弾」と「遺骨」。砲弾が限られた地域に集中的に打ち込まれたの…

はじめて読む人のローマ史1200年

本村凌二『はじめて読む人のローマ史1200年』祥伝社新書、2014 著者は古代ローマ史の先生だから、内容は確実だろう。しかし、新書一冊でローマ史(西ローマ滅亡まで)を全部まとめるのは力技。分量の都合というものがあるので、そんなにたくさんのことは書け…