はじめて読む人のローマ史1200年

本村凌二『はじめて読む人のローマ史1200年』祥伝社新書、2014


著者は古代ローマ史の先生だから、内容は確実だろう。しかし、新書一冊でローマ史(西ローマ滅亡まで)を全部まとめるのは力技。分量の都合というものがあるので、そんなにたくさんのことは書けないが、塩野七生の本やきちんとした研究書を全部読むわけにはいかないので、こっちで片付けたほうがまし。

起承転結の4つのテーマを設定しており、起が、建国からカルタゴ滅亡まで、承が、内乱の一世紀からネロ暗殺まで、転が、五賢帝からセヴェルス朝の終わりまで、結が、軍人皇帝から西ローマ滅亡まで。

こういうふうにざっと通史でまとめられると、自分の知っていることは、カルタゴ戦争、内乱の一世紀、五賢帝コンスタンティヌス、西ローマ滅亡という点だけで、線になってないということがあらためてわかった。途中が抜けているので、ローマ史がどういうものかぜんぜんわかってなかった。

だいたいローマ勃興期は、ギリシャ全盛期の後に来ているのだが、ローマの建国期はギリシャ全盛期よりはるかに古いということ自体がわかってなかった。

共和政(著者は、ローマについては、「共和制」とは書くなといっている)のしくみも、役職の名前しか覚えていなかったが、ざっとしたことはわかった。これが頭にないと、アメリカ人やヨーロッパ人がローマを範にする理由もわからない。

ローマ衰亡の理由は、異民族の侵入、インフラの老朽化、イタリアの凋落の3つにまとめてあるが、読んでみるといままでの自分の理解はやはり表層止まり。

参考文献リストとか、次をもうちょっとだけまとめてある本が紹介されていないことが惜しいが、十分に役に立った。古代のことが多少はわかっていないと、やはりいろいろと不便。