西太后

加藤徹西太后中公新書2,012


これはかなり面白かった。西太后を通じて清朝後期の中国史を描いた本。そもそも清朝の歴史について、よく知らなかったので、清朝の宮廷制度や、皇帝の結婚、清朝内部の満人と漢人の関係の部分から色々と勉強になった。

西太后と言えば、中国でも日本でもほとんど悪人扱いだが、他の中国の悪女と比べると、特に暴君めいたところは非常に少なく、むしろうまく立ち回り、長命だったために、支配期間が長かった普通の君主と言う印象。

ただ政治に経験があると言う人ではなく、清朝の難局に対処するには、あまりにも政策に識見がなさすぎる。こうした人物が王朝末期に、長く支配を続けたことが、清朝の悲劇。しかし逆に西太后が長命だったために、清朝の運命はしばらく長引き、その結果中国の混乱はますます深まったともいえる。

西太后は、近代中国の混乱と悲劇の責任をその身に押し付けられている。共産党政権になってからの、中国の状況が西太后の時代に全て出現していると言う著者の指摘も面白かった。