紙の歴史

桑原隲蔵『紙の歴史』


紙の歴史だが、後漢代に蔡倫が発明したことになっているのは、蔡倫が紙の新しい原料を発見したということで、製紙法自体は前漢代に存在した。「説文解字」に「紙」の項があるが、これは今でいう紙のことではない。「説文解字」は蔡倫とほぼ近いが、それ以前に成立しているので、紙という語は現在の意味で使われていた語ではなかったということ。

その後、タラス河畔の戦いで唐から西域諸国に紙が伝来したということになっているが、この時点で紙が何から出来ていたかということが問題。植物繊維から出来ていたのだが、半分は布のことを紙といっている。しかし、現代の紙と同様でなくても、当時の紙は繊維をすいてできていたものがあった(現在のものよりかなり質は落ち、書きにくい)ことは事実。これを英独仏の学者の文献から示しているのが、この論文のえらいところ。