ナポレオン

上垣豊『ナポレオン 英雄か独裁者か』山川出版社、2013


山川の世界史リブレットのナポレオン編。おもしろかった。

英雄か独裁者か、というタイトルになっているが、そのとおりで、どっちとも言えるのがナポレオン。戦争もできて、内政もできたのだし、革命期の混乱を収拾できたのはナポレオンだけ。後の政治家はあまり役に立っていない。

ヨーロッパを征服する手前まで行き、近代フランスの基礎を作ったのだから、英雄扱いされるのはあたりまえ。しかし、実際には、大戦争をしなければ英雄にはなれず、この大戦争そのものが失敗だったので、没落も必然的。

おもしろいのはナポレオン死後にナポレオン伝説がどのようにできていったかという話。フランスでも、王政復古の後はナポレオンの評判は悪く、第二帝政期にも、ナポレオンの持ち上げはあまりされていなかった(ナポレオン3世が、自分の影が薄くなるのを嫌ったため)。

むしろナポレオン伝説が持ち上げられるのは、第二次大戦後。ド・ゴールとゴーリストがナポレオンを持ち上げていた。また、フランス以外でも肯定的に言及されることが多いが、スペインでは悪者扱い。けっきょく、いつも歴史はおはなしの国。