レーニン

和田春樹『レーニン 二十世紀共産主義運動の父』山川出版社、2017


山川の「世界史リブレット」の一冊。短い伝記シリーズ。これはけっこう需要があるだろう。この巻もちゃんと和田春樹に書かせているわけだし。

100頁くらいの短い本だが、このページ数で、レーニンのことは過不足なく書いている。レーニンの本名はウリヤノフなので、これは変名だが、スターリンと違って、これはどういう由来でついている名前なのかは知らなかった。この本によれば、『帝国主義』を出版する時に、「レーニンの名を望むが、レニーフツィンでもよい」と言ったということで、レニーヴィ(怠け者の)の名詞形だから、自分を怠け者として叱咤する考えから来たという。

レーニン研究がやりつくされた現在だから書けた本で、レーニンの路線は、けっこう途中で変わっており、間違えていたところは間違えていたし、革命後のテロについても、遠慮なく書いている。また、晩年の政治的遺言の価値についても、非常に低く評価している。

革命家または政治家としては時を得て大業をなした人ではあるが、神格化された部分が非常に大きい人だということ。またレーニンの路線が勝ったために、ロシアのその後の体制が決まってしまった(スターリンはその延長線上にいる人)ということも見逃せないこと。短いが、いろいろと材料を提供してくれる本。