蒙求

(今鷹眞訳)『蒙求』角川ソフィア文庫、2010


ビギナーズ・クラシックスの一冊なので、抄訳。このシリーズ、古典の抄訳で、内容には粗密があるが、簡単に中国と日本の古典に取り付けるので便利。そんなに長くないのでサクサク読める。興味が持てれば、全訳を求めればよし。

蒙求はもとが子供用だが、故事を子供に覚えさせるために韻文にした本。しかし、故事といっても、前漢後漢、魏晋がほとんどで、その前と後がない。本自体は9世紀にかかれているので、唐代は書けないにしても、秦代以前と六朝時代があまり載っていないのは変。また、選択や配列の基準もよくわからない。

というわけで、中国ではそれほど長く読まれなかったが、日本では便利なので読まれていたというもの。この抄訳では31編しか採られていない。とはいえ、それでも知らない話や人名が頻出するので、読まないより読んだほうがよい本。韻文だけではわからないので、注がついていて、これでやっと内容がわかる。基本的にこの抄訳版は、この注の日本語訳を紹介するためのもの。

読み物としておもしろいので、今読んでも問題ない。これを覚えろというのは無理だけど。前漢の半ばから後漢末、晋代のことは知らないことが多いので便利。