100歳の台湾人革命家・史明 自伝

史明(田中淳構成)『100歳の革命家・史明自伝 理想はいつだって煌めいて、敗北はどこか懐かしい』講談社、2018


著者は1918年台湾生まれ。もう101歳。台湾の大地主の家に生まれ、台北一中を中退して、早稲田高等学院から早稲田の政経を卒業。そこで共産党オルグされて、大陸に渡り、共産党の特務として働く。

北京、上海、張家口、山西省を渡り歩き、台湾人部隊の指揮官となったり、党学校で教育を受けたりした。数度結婚。しかし共産党が嫌になり、日本人の妻を連れて脱走、台湾に帰還。ここでも国民党支配を嫌って日本に亡命。

池袋に中華料理屋を開店し、そこで仕事を続けるが、台湾独立運動を始め、台湾内部でのテロ活動を援助する。台湾ではお尋ね者。その後日本国内での台湾独立運動アメリカに軸足を移すと、渡米してそこで台湾独立をアピールする。妻とは離婚。

1993年以後、台湾からの法的追及が終わると、台湾に戻る。以後は台湾独立運動の普及と教育に努力し、蔡英文とも交際がある。

というような経歴の人。帯や巻頭に蔡英文の推薦文が大きく載せられていて、実際に親交があることがわかる。というか、この人は台湾独立運動の古参活動家なので、その方面で名声が高いのだ。

「独立の志士」みたいな感じの人だが、1970年代以前の日本が台湾独立運動の拠点になっていたとは全然知らなかった。金美玲などもその一人。それにしてもこの著者が行っていたのは本物のテロ活動で、台湾で列車を爆破するとか、蒋介石暗殺を計画するとか、まあたいへんだ。

単に著者の聞き書きだけではなく、他の人の述懐もコラムではさんであって、日本人の妻(これは事実婚)と離婚した事情が、元妻の側から「女癖が悪すぎた」とはっきり書いてあるのには笑える。

まあ、いくつか腑に落ちないこともあるにはあるが、この本は読みやすいのがいい。いずれこういう人の検証はきちんとされなければならないが。