中国の大盗賊 完全版

高島俊男『中国の大盗賊 完全版』講談社現代新書、2004


これは名著。高島俊男碩学として知られている人だが、やはりすごい。

中国の皇帝家を新しく興した人は、みな盗賊。それらが盗賊である理由を、いちいち書いたというもの。陳勝劉邦朱元璋、李自成、洪秀全毛沢東と続く。中国の歴史は、賊が帝を倒して、これに取って代わる歴史。そのことがよくわかる。

このことを主張するだけなら、それなりに誰にもできるのかもしれないが、著者の引用の深さと広さは普通の人には追いつけないもの。ただの中国史の本だけでなく、中国の学者の論文や本をまめに読んでいなければ書けない。専門の中国史家もこれは簡単にはできていないのだし、もともと東洋史家というのは碩学が雲のように集まっているもの。それでこれだけ書けるのだから、やはりすごい人。

この本が「完全版」となっているので、もとは最後の毛沢東の章を削った形で出版されていて、その部分を補ったのがこの本だから。この章があるとないとでは全然おもしろさが違う。それは中華人民共和国共産主義といよりは、伝統的な中華帝国の歴史に連なっていることがわかるから。