1918年最強ドイツ軍はなぜ敗れたのか

飯倉章『1918年最強ドイツ軍はなぜ敗れたのか ドイツ・システムの強さと脆さ』文春新書、2017


第一次世界大戦を「ドイツ側から」見た本。そもそも第一次世界大戦の戦史自体を十分に理解していなかったのだが、この本でかなり頭に入った。

しかしこの本の価値は、通史的な戦史を理解させるだけでなく、それを通じて、ドイツとドイツ人の強みと弱みを明らかにしていること。日本以上に集団的、組織的な社会(日本は組織としては大したことはなく、ムラ集団の結束以上にはなってない)を形成しているのがドイツ。

能率のよい組織ということでは、一番なのだろうが、そういう組織によくありがちな、融通が利かないということの悪影響がまともに出まくったのが、第一次世界大戦

組織の上の人(皇帝、首相、参謀総長、参謀次長ら)が、お互いに相談できておらず、意思疎通ができていない状態で、もともと決められている路線をひたすら突っ走って、限界を越えてしまった結果負けてしまったという、どこにもありそうなこと。しかし、ドイツの場合、効率がいいだけ、そういう状態でもなんとか戦線を守ることができており、限界まで戦えた。

逆に、1918年春季攻勢では、「個別の戦いではよくやれていたが、結局目標は達成できなかった」ことで、早く限界点に達してしまった。むちゃをしなければ、もっと戦いを長引かせることができたのだろうが、アメリカが参戦してくる前に戦争を片付けなければならないので、これを避けられなかった。

アメリカが参戦してきた理由は、無制限潜水艦戦で、これを無理やりやった理由は、イギリスを早く降伏させるため。すべての手が裏目に出ているが、それはリスクコントロールができていなかったことと、上層部の視野が狭すぎたことによる。

いろいろと考えさせられることが多かった。ドイツは今でもこれ。