フランス現代史 隠された記憶

宮川裕章『フランス現代史 隠された記憶』ちくま新書、2017


著者は、毎日新聞記者。この本は、フランスの「戦後史」。ネタは、第一次大戦、第二次大戦、アルジェリア戦争

第一次大戦は、「不発弾」と「遺骨」。砲弾が限られた地域に集中的に打ち込まれたので、まだ不発弾がたくさん残っている。ありすぎるので、全部処理するのはもちろん、日本のようにていねいには始末できない。現在になっても、まだ不発弾処理専門の内務省の組織がある。遺骨も、ありすぎて全部は拾えない。

第二次大戦は、ヴィシー政権とその協力者。いまのフランスではヴィシー政権は、真っ黒なネタだが、昔はそうでもなかった。80年代から90年代にかけて、ヴィシー政権が占領軍命令で嫌々ではなく、自発的にユダヤ人移送に協力していたとわかってから、ヴィシー政権は悪者にされた。

しかしこの章、ヴィシー政権を悪者にするのはいいが、ドイツ占領下のフランス北部でも、対独協力者はたくさんいたわけだし、そっちの追求はどうなってるのか?ヴィシーを悪者にして、そっちに注意を集めているのでは?と思うが、そこまでのツッコミはない。

アルジェリア戦争では、アルジェリアの現地徴集兵=アルキの問題。こっちは、フランスに協力をさせておいて、途中で放り出した。アルキはフランスに迎え入れるべきという意見があったが、ド・ゴールは無視した。ド・ゴールは、自分が暗殺されかかったくらいなので、アルキをフランスに引き取ると余計なトラブルが増えると考えた。

まあフランス人、ある程度はまじめに過去に取り組んではいるが、第二次大戦はともかく、アルジェリアは生々しすぎて、簡単にはできていない。ナチスは悪者みたいなことも簡単にはいえないからだ。インドシナとかはどうなのか。いろいろとおもしろかった。