支那人間における食人肉の風習

桑原隲蔵支那人間における食人肉の風習』


著者は、中国文学者。内藤湖南と並ぶ東洋史学者。宮崎市定の師匠。

この本、タイトル通り中国社会における食人風習の話だが、文献の出典が非常に広い。中国の史書にあたっていることは当然として、フランス語、ドイツ語、英語の文献にもあたっており、中国の食人を、中国とヨーロッパがどのように見ていたかを細かく描いている。

紂王が直言した臣下を食べたという話にはじまり、春秋戦国時代、漢、三国、隋唐、五代十国、宋、元、明清まで、幅広く事実をあげていて、食人の風習が中国にずっと根付いていることを示している。

食人の理由は、飢饉、包囲のほか、敵に対する辱めや憎しみの表現、薬、嗜好の5つをあげる。飢饉、包囲は非常の場合だが、これだけ例があると例外とはいえない。嗜好は異常者の行為ともいえるが、これも斉の桓公易牙が自分の子供でもてなした例があるので、極端におかしいとはされていない。

薬、憎悪はさらにそうで、比較的新しい時期でも、人肉が霊薬扱いされていることを考えると、根本的におかしいとはされていないということ。

いちおう人肉食の事実だけで、味がどうのということは書いていないのだが、さすがにそこまでは書けなかったのか。