秦始皇帝

桑原隲蔵『秦始皇帝


桑原隲蔵の、始皇帝についての小文。始皇帝が悪ばかり強調されるのは、漢代のためにする議論と中国人の道徳主義の影響だと断じていて、これはいまでは普通の議論だが、当時は(1927年)斬新だったはず。

勉強になったのは、焚書坑儒のところ。焚書は、紙がなく木竹で書があった時代に民間の書を焚書しても、そんなにダメージはなかったのではないかと言っている。当時は書物の内容は記憶で伝達されるのがふつう。

坑儒については、坑されたのはほとんどが方士だし、始皇帝が誹謗され、容疑者がわからないから坑したものであり、破廉恥漢、誹謗妖言の犯罪容疑者であり、無実の者を坑したものではないと言っている。まあ、そうかなあ。

今では、乱暴なことはともかく、始皇帝がなければ中国の統一もなかったことがわかっているから、その点では採るべき議論。それに読んでいておもしろい。