東洋文化、東洋思想、東洋史

津田左右吉東洋文化、東洋思想、東洋史


津田左右吉の「東洋」についての文章。卓論。

東洋というのは西洋に対して言う言葉だが、もともと中国では、東洋というのは太平洋で、西洋というのは、南シナ海からインドのこと。もちろん中国は中心だから東洋には入らない。

しかし日本が近代化するようになると、世界史、万国史のことをのちに西洋史というようになり、それに対抗して東洋史というものがあるということにされた。東洋史といっても、国史はそれとは別個に成り立っているので、実際には東洋史は中国とインドのこと。

現実に東洋史というものがあるのかといえば、日本、中国、インドはぜんぜん別であり、相互に交渉はあっても、共通点はない。中国は仏教はインドからもらってきているが、 仏教が中国に浸透しているかといえばそんなことはない。インドは中国からの影響をほとんど受けていない。日本は中国からの影響を多少受けているが、ほぼ独立で、儒教も日本に浸透しているとはいえない。

したがって、東洋というものはほぼ存在せず、この言葉が何かのカテゴリーになるという考えも有害無益。

現在では東洋という言葉も使わなくなってきたが、アジア主義の影響は多少はある。実際にはアジアの統一性というものはないので、それを再認識させるのに有益な議論。