ケマル・アタテュルク

設楽國廣『ケマル・アタテュルク トルコ国民の父』山川出版社、2016


山川の世界史リブレット、ケマル・アタテュルクの本。この時期のトルコ史をぜんぜん知らなかったので、非常に勉強になった。

もともとは軍人だが、この人の真価が発揮されたのは、むしろ第一次世界大戦後のこと。ギリシャ、イギリス、フランスの脅威に対して、トルコ国家を守り抜いたことが、この人の功績。これがあったから、オスマン朝の廃止もできたし、カリフ制を廃した世俗国家としてのトルコ共和国の樹立も可能になった。

それでも、もちろん初期のトルコ国家は弱いものであり、つねにカリフ制支持者、イスラムからの攻撃にさらされていた。これに対抗してトルコ共和国を守ったこともこの人の功績。

このように見てみると、トルコ共和国は、第一次世界大戦の敗北から立ち上がったものであり、それがオスマン朝を否定して、トルコ人のトルコ国家を守らなければならなかった以上、世俗制やカリフ制否定は必然。これを推進したのはトルコ軍だから、実質的にトルコ共和国軍事独裁制になってしまうことも仕方がない。最近のトルコの変化は、この軍事独裁制が飽きられた結果として起こったもの。

昔のことを勉強する必要性をますます確信できた。