#その他社会学

フェイクニュース

一田和樹『フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器』角川新書、2018 著者は、もとIT企業経営者、今はサイバー分野を中心とした作家。 題名は「フェイクニュース」となっているが、狭い意味でのフェイクニュースではなく、政治や戦争の道具として使われる情報…

開けられたパンドラの箱

月刊『創』編集部編『開けられたパンドラの箱 やまゆり園障害者殺傷事件』創出版、2018 これはいろんな意味でおもしろかった。読む価値があるのは、植松聖自身の文章(篠田博之との手紙)が載っている前半のみ。 読んでいるとわかるが、非常に論理的で明晰な…

女はなぜ土俵にあがれないのか

内館牧子『女はなぜ土俵にあがれないのか』幻冬舎新書、2006 これは名著。内館牧子が東北大学に提出した修士論文を出版したもの。 内容はタイトルの通り、女が土俵に上がれないことになっている理由を歴史的に考察したもの。現在の大相撲の土俵づくりか…

商店街はなぜ滅びるのか

新雅史『商店街はなぜ滅びるのか』光文社新書、2012 著者は、1973年生まれ、東大人文社会系研究科単位取得退学という人。この本は、商店街の盛衰を描いたようにみえるが、じつはそれはできておらず、「零細小売店の盛衰」というような本。 おもしろいのは、…

誰もが嘘をついている~ビッグデータ分析が暴く人間のヤバい本性~

セス・スティーブンズ・ダヴィドウィッツ(酒井泰介訳)『誰もが嘘をついている ~ビッグデータ分析が暴く人間のヤバい本性~』光文社、2018 ビッグデータ(この場合は検索語)分析で、人間行動をあぶり出すという本。質問紙調査では絶対にわからないこと、…

風俗で働いたら人生変わったwww

水嶋かおりん『風俗で働いたら人生変わったwww』コア新書、2016 これは拾いもの。非常に面白かった。本のタイトルがバカっぽいのに対して内容は真逆。分析的で、実践的な本。 著者は、奥付によると1983年生まれ、風俗嬢兼風俗嬢講師とある。これだけではどこ…

新聞社崩壊

畑尾一知『新聞社崩壊』新潮新書、2018 著者は元朝日新聞社員。販売畑が長かった人。この本は、河内孝『新聞社 破綻したビジネスモデル』新潮新書、2007の続編のような本。河内孝は、毎日新聞記者で、このままでは新聞社の事業は継続できないことに警鐘を鳴…

男おひとりさま道

上野千鶴子『男おひとりさま道』文春文庫、2012 上野千鶴子の「男のための老後」本。おもしろかった。 高齢化となると、だいたい自分がひとりになる。子供はいないし、妻(夫)に先立たれる可能性も大きい。死別、離別、独身のどれかを問わず、結局は自分ひ…

底辺への競争

山田昌弘『底辺への競争 格差放置社会ニッポンの末路』朝日新聞出版、2017 山田昌弘の新著。あいかわらず非常におもしろい。 バブル以来、30年間の日本の変化をまとめた本だが、それが「底辺への競争」つまり、蜘蛛の糸状態だという話。 日本社会は、バブル…

性風俗のいびつな現場

坂爪真吾『性風俗のいびつな現場』ちくま新書、2016 風俗サービス業のルポだが、この本は、地雷、障害者、妊婦・母乳専門、熟女などの特殊な風俗業を扱っているのがめずらしい。 著者の論旨は、こういう種類の風俗(最底辺)にいる風俗嬢は、基本的にいろい…

お寺さん崩壊

水月昭道『お寺さん崩壊』新潮新書、2016 著者は、「高学歴ワーキングプア」の著者。福岡県で浄土真宗本願寺派の寺の副住職を「兼業」している。 人口減少以上のペースで檀家が減っているのだから、寺がなくなるのは当たり前。しかし、この本の価値は、寺の…

友だち幻想

菅野仁『友だち幻想 人と人の〈つながり〉を考える』ちくまプリマー新書、2013 著者は社会学者。去年亡くなったというのは、これを読んでから知った。1960年生まれということなので、短い人生だが、人間、死ぬ時はそういうものなのでしかたがない。 で、この…

不寛容の本質

西田亮介『不寛容の本質 なぜ若者を理解できないのか、なぜ年長者を許せないのか』経済界新書、2017 ネット選挙についての著者の本がおもしろかったので、読んでみたが、これはタイトルもおかしいし、内容もまとまっていない。 世代間格差の議論をしたいらし…

ロボットの脅威

マーティン・フォード(松本剛史訳)『ロボットの脅威 人の仕事がなくなる日』日本経済新聞社、2016 原題"Rise of the Robots"だが、これを『ロボットの脅威』としたのはうまい。でも実際にそういう内容の本。 とにかく今、人のやっている仕事をどんどん食っ…

部落問題入門 部落差別解消推進法対応

宮部龍彦、全国部落解放協議会『部落問題入門 部落差別解消推進法対応』示現社、2017 鳥取ループこと宮部龍彦の部落問題入門本。解放同盟とも人権連とも違う立場で書かれた本として画期的だし、この分野で読まれるべき本。 入門本として必ず書かれていなけれ…

感情で釣られる人々

堀内進之介『感情で釣られる人々 なぜ理性は負け続けるのか』集英社新書、2016 これはけっこうおもしろい本。タイトルを見ると、「感情で釣られる」人間の性質を批判しているように見えるが、むしろ、簡単な仕組みを工夫することで感情を誘導してみようとい…

月刊ポスドク 科研費特集

『月刊ポスドク』第4号、「科研費特集」 これは薄い本。月刊じゃないけど、『月刊ポスドク』。これは『月刊住職』のパロディだから。 科研費特集というわけだが、ポスドクには科研費は重要。これがないと、お金がないので、研究に差し支える。科研費の取り方…

徹底調査 子供の貧困が日本を滅ぼす

日本財団 子どもの貧困対策チーム『徹底調査 子どもの貧困が日本を滅ぼす』文春新書、2016 子どもの貧困問題についての本。この本のセールスポイントは、具体的に子どもの貧困が最終的に社会的コストになっていることを、数字で出してきているところ。副題は…

ショッピングモールから考える

大山顕、東浩紀『ショッピングモールから考える ユートピア・バックヤード・未来都市』ゲンロン、2015 買ったまま放置していたが、読んでみると非常におもしろかった。ショッピングモールから話を始めることで、建築、都市、生活などなど、いろんなところに…

保守の本分

noiehoie『保守の本分』、扶桑社新書、2013 自称保守で、反レイシズム、反原発、反貧困を標榜するネット論客、noiehoieの著書。自分の立場表明のような本。 著者によると、保守であっても、反レイシズム、反原発、反貧困の立場をとることは可能だし、むしろ…

たのしいプロパガンダ

辻田真佐憲『たのしいプロパガンダ』、イースト新書Q、2015 政治プロパガンダと娯楽の結びつきを検討する本。著者の他の本と同じく、洋の東西を問わず多彩な事例が引用されているので、楽しく読めて勉強になる。 著者が強調することは、「プロパガンダは強面…

新聞記事が「わかる」技術

北村肇『新聞記事が「わかる」技術』、講談社現代新書、2003 少し古い本だが、今でも十分に役に立つ本。著者は、毎日新聞ブランド本部次長兼社長室委員(当時)。現在は、「週刊金曜日」社長。 この本の一番の読みどころは、新聞記事の微妙な表現を記者がど…

在日コリアン白書2014

李策『在日コリアン白書2014』、ピッチコミュニケーションズ、2014 この本は電子版で買ったが、紙媒体が見当たらないので電子版のみの発行かもしれない。著者は、1972年生まれ、在日朝鮮人3世のライター。 2014年時点での在日の意識や生活について、説明して…

視聴率の正しい使い方

藤平芳紀『視聴率の正しい使い方』、朝日新書、2007 著者は元ビデオリサーチ社勤務、ピープルメーターの日本導入に尽力した人。視聴率の見方、使い方(特に間違った見方、使い方)について書かれた本。 著者が最も強調する「間違った使い方」は、標本誤差そ…

最貧困女子

鈴木大介『最貧困女子』、幻冬舎新書、2014 昨年出版されて、注目されている本。読んでみたが、読み通すのがきついくらいの、文字通り「最低辺の人間と生活」を描いた本。タイトルは「最貧困」となっているが、より正確には「最低辺」とするべきだろう。著者…

女中がいた昭和

小泉和子『女中がいた昭和』、河出書房新社、2012 これは本物のメイド=女中の実態についての本。『昭和の結婚』と同じ編者の本で、こちらも非常におもしろい。 まず女中というものがいつからいつまでいたのか。家事労働をする奉公人は昔からいたが、この本…

昭和の結婚

小泉和子編『昭和の結婚』、河出書房新社、2014 これは非常におもしろかった本。「昭和」というのは、戦前から昭和40年代くらいまでをいうおおざっぱなくくりだが、結婚についてのさまざまな社会的慣習が今とは違うことだらけなので、どこを読んでもおもしろ…

キャバ嬢の社会学

北条かや『キャバ嬢の社会学』、星海社新書、2014 この本のもとは、著者の京大での修士論文。しかし、文献調査ではなくて、著者自身がキャバ嬢になって参与観察で書いているので、ルポルタージュとしておもしろい。 最初のところに、著者のフェミニストとし…

高学歴女子の貧困

大理奈穂子、栗田隆子、大野左紀子、水月昭道『高学歴女子の貧困 女子は学歴で「幸せ」になれるか?』、光文社新書、2014 これはかなり切ない本。著者のうち、水月昭道は、『高学歴ワーキングプア』、『ホームレス博士』の著者で、この本はそれらの「女性版…

ヤンキー経済

原田曜平『ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体』、幻冬舎新書、2014 これはヤンキー本だが、マーケティングの人が書いているので、主にヤンキー(マイルドヤンキー)の消費行動について書いた本。今年出た本だが、図書館で予約してから順番が回ってく…