男おひとりさま道

上野千鶴子『男おひとりさま道』文春文庫、2012


上野千鶴子の「男のための老後」本。おもしろかった。

高齢化となると、だいたい自分がひとりになる。子供はいないし、妻(夫)に先立たれる可能性も大きい。死別、離別、独身のどれかを問わず、結局は自分ひとりで老後を送るのが当然。そこで一番問題になるのは、その生活を本人が送ることができるかどうか。女よりも男のほうが、これがややこしい。

また、介護の手間がかかるのだが、それ以上にめんどくさいのは、介護される側の問題。男は介護される時に文句を言ったり、介護者にまともな態度を取れないことがある。

著者の「男の七戒」というのが書かれていて、
1.前歴は言わない、聞かない。
2.家族のことは言わない、聞かない。
3.学歴を言わない、聞かない。
4.金の貸し借りをしない。
5.「先生」、「役職名」で呼び合わない。
6.上から目線でものを言わない。
7.特技やノウハウは聞かれた時以外には出さない。

これを実践できるのは、たぶん少数。ほとんどの男にはこれはできないだろう。しかも、現役時の地位や学歴が高い男ほどむずかしい。従って、上野千鶴子の言っていることは、これまでと同じように「男へのむちゃぶり」。

しかし、これができないとどうなるかといえば、完全孤立独居にならざるを得ないことになるかもしれない。従って、嫌でもなんでも、おとなしくなれということ。老後になってから人格変えろと言っても無理なので、これはやっぱり無理だと思うけど。

上野千鶴子はスーパーウーマンだからなんでも言える。現実には薄くつながることができない人が多数のような気がするが。